かきがら掌編帖

数分で読み切れる和風ファンタジー*と、読書・心理・生活雑記のブログです。

2019-01-01から1年間の記事一覧

仕事納め

今日が、令和初の仕事納めでした。 先週の金曜日から休みに入っている従業員が多く、閑散としたオフィスで、今年のこと、来年のことなど考えながら、一日を過ごしました(仕事もしました)。 記念写真 皆が休んでいるなか出勤とは殊勝である、ということで、…

御池ガモの里親(創作掌編)

御池(みいけ)ガモは、ペット用に品種改良されたカモの一種で、ペットブームが過ぎた後、御池山公園の池に放置され半野生化した水鳥である。 公園の自然は造成されたものだ。 それでも、芝を植えた築山や、緑に囲まれた大きな池は、町なかのオアシス的存在…

川上和人著『鳥類学者だからって…』

掌編を書くために知りたいことがあり、鳥類学者の本を読みました。 川上 和人 著『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』(新潮社) 鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。 作者:川上 和人 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2017/04/18 メディ…

煙の神様(掌編創作)~銀ひげ師匠の魔法帖⑪~

銀ひげ師匠の書道教室は定休日だったけれど、晶太は書道だけではなく、魔法の弟子でもあるので、修行は休まずに続ける。 入り口の引き戸を開けると、師匠が玄関まで来て、 「ちょっと出掛けてくるよ、すぐ戻るからね」 と言い、入れ違いに出て行った。 とこ…

ティーバッグの持ち手問題

数週間前、私の一番初めの読者 Emily (id:Emily-Ryu)さんのブログが、しばらくお休みに入っていることに気づきました。 私はEmilyさんのブログが大好きで、記事の更新を楽しみにしていたので、さびしい限りです。けれど、お休みは大切ですから、再開を静かに…

雪娘の櫛、後日譚(創作掌編)~ハヤさんの昔語り#2-10~

ふと思い立って旧友を訪ねたら、先客がいた。 以前から話に聞いていた「山猫さん」という人だ。 旅の途中で立ち寄ったらしい。 「山猫さんは、物語を書くひとでね、お料理も上手なのよ」 と、友人が紹介する。 私は、料理はあまり得意ではないから多くを語れ…

イソバイドシロップ

先週の日曜日の朝、目を覚ますと、またもや右耳につまったような閉塞感がありました。 toikimi.hateblo.jp 早速、翌日には耳鼻科へ、約3ヶ月振りの受診です。 聴力検査の結果、前回と同じように右耳低音部の難聴が発症していましたが、前回よりは軽かったの…

雪娘の櫛(創作掌編)~ハヤさんの昔語り#2-9~

コーヒーを淹れるお湯の適温は、83度から96度だと言われている。 ハヤさんはコーヒー豆によって、88度か93度に分けているそうだ。 「さらに言えば、美味しく飲める温度は60度から70度なので、お客様にお出しするとき、70度以下にならないよう心掛けています…

『はたらく細胞原画展』に行ってきました。

toikimi.hateblo.jp 去年、TVアニメ『はたらく細胞』について記事を書きましたが、今回は漫画の原画展に行ってきました。 『はたらく細胞』は、赤血球と白血球を中心とした体内細胞の人知れぬ活躍を描いた細胞擬人化ファンタジーです。 プロの漫画家さんです…

テヅカ料理人学校の卒業実習(創作掌編)

toikimi.hateblo.jp 自分でも感心するくらいがんばった1年が過ぎ、料理だけではなく自信も身につけた、と僕は思った。 けれど今、「卒業実習室」へ向かいながら、胸のドキドキを押さえられない。 昨日、僕は医師の診察を受け、そのまま絶食した。 実習室に…

テヅカ料理人学校の料理対決(創作掌編)

学校を卒業したら、両親が営む小さな洋食屋を継ごうと決めた。 子供のころから見ているので、大変さはそれなりにわかっている。とはいえ、僕には他に進みたい道もなく、どうせならいちばん身近な人に喜んでもらえる仕事をしようと考えたのだ。 けれど、親た…

近くて遠いところ

先週の三連休最終日の夜、シーリングライトの蛍光灯が切れました。 椅子の上に乗っても天井のライトには手が届かない、それは引っ越してきてすぐ確認し、蛍光灯の交換は誰かに頼むしかない、と思っていました。 いざそのときが来てみると、カバーをはずさな…

カプセル(創作掌編)

変わり者だが優しかった伯父が亡くなり、遺産としてカプセルホテルを相続することになった。 今でこそ、スタイリッシュで快適な進化型が増えてきているけれど、僕が相続したのは、築25年を数える個性派のカプセルホテルだ。 かつて伯父は、日本発祥のカプセ…

ノマドカフェの窓

月末から月初にかけての数日間は、仕事がいつもより忙しいので、あまりブログ記事を書けませんでした。 それでいながら、休日になると緊張が解けてぐだぐだになってしまい、パソコンに向かっても気力が湧きません。どうせなら、やることをやって心置きなく、…

観天望気(創作掌編)~ハヤさんの昔語り#2-8~

「観天望気」 書いた文字を見せながら読みあげると、ハヤさんが首をかしげて言った。 「カンテンボウキ……、これまで使った記憶のない言葉です」 私も同じだった。今日、仕事で気象予報士の人と話す機会があり、仕入れてきたばかりの知識だ。 観天望気とは、…

エアコンから水がたれてきました。

先週のことになりますが、朝起きてふと見たら、床に数センチ大の水たまりができていました。 ちょうどエアコンの真下です。大さじ1杯くらいの量ですが、ギョッとしました。 拭き取るそばから、またポタリ…。 水受けの器を置き、音が気になるので、底に雑巾…

シャンパンタワー(創作掌編)

めったに乗らないタクシーで、私は結婚披露パーティの会場へ向かった。 スピーチの原稿を何度も読み返す。 (道が大渋滞して、たどりつけなければいいのに)と考えていたら、むしろ早めに到着してしまった。 ホテルのエレベーターが故障して閉じ込められる、…

願い事の速度(創作掌編)

1泊2日の社内研修では、着いた日の夜に「星見イベント」が予定されていた。ペルセウス座流星群の出現期間ということらしい。 (流れ星 3度唱える 願い事) 妙な俳句調の言葉が頭から離れなかった。どうしても叶えたい願いがあるせいだ。 私の願い事は3つ…

蚊帳体験

両親とも東京の生まれだったので、「夏休みに泊まりがけで田舎に行ってきた」という友だちをうらやましく思っていました。 それでも一度だけ、叔母の配偶者(義理の叔父)の田舎へ連れて行ってもらったことがあります。 三世代同居の大きな家で、叔母夫婦と…

かみふぶき(創作掌編)~銀ひげ師匠の魔法帖⑩~

銀ひげ師匠の書道教室に通って来ている泰一郎君が、弟子入りを志願したそうだ。 師匠からそのことを聞いて、晶太は驚いた。 「どっちの弟子ですか?」 「それがな、書道ではなく魔法の方なんだ。他の生徒さんたちが話しているのを耳に挟んで、私が魔法使いだ…

レイ・ブラッドベリ『太陽の黄金(きん)の林檎』

レイ・ブラッドベリ(1920年8月22日~2012年6月5日)はアメリカの作家。「SFの抒情詩人」「物語の魔術師」「エドガー・アラン・ポーの衣鉢をつぐ幻想文学の第一人者」などと称されています。 短編の名手で、好きな作品はいくつもありますが、最も題名が印…

創業百年目のタイムトラベル(創作掌編)

『伝統と変化』を社是とする老舗製菓会社・翠雨堂(すいうどう)は、創業百年を迎えるにあたり、タイムマシンを使った記念イベントを実施した。 近年、民間企業によるタイムトラベル事業が現実化したとはいえ、高額な料金に加えて、厳しい制約も課せられるた…

水鏡(創作掌編)~ハヤさんの昔語り#2-7~

『真実の顔を映す鏡』というものを見てきた。 普段、私たちが鏡のなかで見慣れているのは、左右反対の顔だ。それを反転して映す鏡がリバーサル・ミラー「反転鏡」で、一般に販売もされている。たまたま立ち寄った店で見掛け、興味津々でのぞき込んだのだった…

釣り針(創作掌編)

僕が大切にしている「家宝」は、振り子と手書きの体験記の2つで、曾祖父母が生きた証しの品だった。 曾祖父はダウジングを生業としていた。 ダウジングとは、Y字型やL字型の棒、あるいは振り子を使って、地下の水脈などを探し当てるという、占いのような…

突発性難聴、その後。

今月中旬、耳に異常を感じて耳鼻科を受診したところ、「突発性難聴」と診断されました。 toikimi.hateblo.jp あたたかいコメントとスターに、励まされ支えられました。 ありがとうございます。 ステロイドの内服治療を始めて6日目、耳鼻科で聴力検査をした…

AIサファリ(創作掌編)

採用面接というより、お互いを知るための面談なので、堅苦しさを感じない雰囲気だった。場所も、交通アクセスと見晴らしの良いレンタル会議室だ。 面談相手は、私と同世代のプロジェクトリーダーで、うらやましいくらい仕事への情熱を持っている上、日に焼け…

耳がボワーンとする。

先週の日曜日の朝、目を覚ますと耳が変でした。 どちらの耳というわけではなく、ボワーンとしていて、ちょっと「つまっている」ような感じもします。 違和感を覚えながら2日間過ごし、3日目に、会社の会議室で雑談していたとき、壁に跳ね返って右耳に聞こ…

胃カメラ3度目で「鎮静剤」

最初に「胃部内視鏡検査」を受けたのは20数年前、定期健康診断のバリウム検査(上部消化管造影検査)で異常が見つかり、二次検査として胃カメラを飲みました。 かかりつけの病院で、医師1名、看護師2名の3人体制でした。予想以上に苦しかったこと、検査…

魔女のおにぎり(掌編創作)~銀ひげ師匠の魔法帖⑨~

銀ひげ師匠の「妹弟子」という人が、書道教室を訪ねてきた。 名前は、ちとせさん。 書道の妹弟子ではなく、魔法の妹弟子なので、つまり魔女だ。 どことなく、晶太が小さいころから知っている看護師さんに似ている。注射が上手で、いつもゆったり構えているそ…

火点し(創作掌編)~ハヤさんの昔語り#2-6~

ハヤさんの珈琲店には、店名の入った小さな看板があり、外が暗くなるとLEDの灯がともる。 タイムスイッチによる自動点灯で、徐々に日没が早くなる時期には、すぐ気づいてタイマーの設定時刻を変えるのだが、日が長くなる場合は忘れがちだった。 「まだ日が暮…