かきがら掌編帖

数分で読み切れる和風ファンタジー*と、読書・心理・生活雑記のブログです。

2017-08-01から1ヶ月間の記事一覧

夾竹桃の庭(創作掌編)

さよ伯母さんは、6月の千恵の誕生日に、いつもプレゼントを贈ってくれる。 お正月やお彼岸に会ったとき、2人で話したことをよく覚えていて、ちゃんと千恵のよろこぶものを選んでくれるのだ。 今年届いたのは、アクセサリービーズのキットだった。宝石箱の…

ミニ間リスト

ミニマリストさんの記事を読むのが好きです。 あの境地まではとうてい行き着けないけれど、もっと物を減らしたいとは思っていて、自分なりに実行してきました。 最近では、存在することを忘れていた物(あ、こんなのとっておいたんだ、みたいな)を発見した…

闇夜のカラス会議(創作掌編)

寝入りばな、美里はカラスの声で目をさました。 近くにある公園には木が生い茂っていて、カラスが巣を作っている。朝晩、呼び交わすように鳴く声は、普段から聞きなれていた。 (こんな夜遅くにめずらしい。カラスって鳥目じゃないの?) 不思議に思って耳を…

カバンが重い

今週のお題「カバンの中身」 毎日持ち歩いているショルダーバッグが重い。 勤め先の近くに引っ越して、「電車通勤中に読むための本」が荷物から減ったけれど、そのわりに軽くはならなかった。 中身を確認してみると、以前に整理したこともあって、特に意外な…

ゲンコツ花火(創作掌編)

雪矢は子どものころから、走ることが好きだった。 飛びぬけて速かったわけではないけれど、同じ速度でどこまでも走り続けることができた。だから、距離の決まっていないかけっこでは、いつも一番だった。 実業団の長距離選手となった現在まで、ずっと走り通…

ほおずきの灯り(創作掌編)

日が暮れるのを待って、和奈は新盆の白い提灯に火をともした。 窓辺に提灯をつるしてから、母に声をかける。 「次は、迎え火だね?」 母は小さくうなずいたけれど、立ちあがろうとはしなかった。 和奈はひとりでベランダに出ると、用意しておいた迎え火をた…