かきがら掌編帖

数分で読み切れる和風ファンタジー*と、読書・心理・生活雑記のブログです。

2018-05-01から1ヶ月間の記事一覧

『遠野物語』口語訳は原典への橋渡し

柳田國男さんの文章が好きなので、口語訳には関心が薄かったのですが、ラジオ番組で紹介されているのを聞き、読んでみたくなりました。 口語訳 遠野物語 (河出文庫) 作者: 柳田国男,小田富英,佐藤誠輔 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2014/07/08 メ…

星月夜の撮影会(創作掌編)

菫青館は、長年ホテル業界でキャリアを積んだ夫婦が、退職後に始めたペンションだった。料理とワインには定評があり、個性的なイベントが含まれた宿泊プランも用意されている。 ウェブサイトによると、オーナー夫妻の趣味はカメラで、2人とも「平賀源内」の…

エアコンから異音「ポンポン・ポコポコ」

今年の大型連休は、よく晴れて風の強い日が多かったように思います。 部屋でくつろいでいるとき、突然、つけていないエアコンから異音がしました。 「ポンポン」あるいは「ポコポコ」という音です。 けっこうな大きさで鳴り続いたので、休日のリラックスモー…

ゲシュタルト療法「蛇口のワーク」

2ヶ月ほど前「蛇口をさがしてみよう」という記事で、統御感(物事を自分でコントロールできるという感覚)について書きました。 一般に、ポジティブ・シンキングとは、コップに半分入った水を見て「もう半分しかない」と考えるのではなく、「まだ半分もある…

小鬼と話す方法(創作掌編)

※ ひとつ前の掌編『新しい家~New Home~』の続きになります。 バルコニーというものは、家の内と外を分ける境界のひとつだ。小鬼が住むのにちょうどいい場なのかもしれないと、紀久代は思った。 朝、窓を開け、さり気なく姿を見せてくれる小鬼に、 「おはよ…

新しい家~New Home~(創作掌編)

紀久代が引っ越してきたマンションの部屋には、ルーフバルコニーが付いていた。 とはいっても、その名から連想される高級なものではなく、建築基準法の斜線規制によって、建物の造りが途中から階段状なった結果、中途半端に広いバルコニーが出来てしまった、…

今こそ『時の娘』

スコットランド出身の推理作家ジョセフィン・テイの歴史ミステリ『時の娘』(1951年発表)は、時を超えて永く読まれ続ける名作中の名作です。 英国史の予備知識がなくても、物語として、知的エンタテインメントとして、心から楽しめる1冊。 時の娘 (ハヤカ…

あたたかな手(創作掌編)

朝、バス停まで歩く道の途中で、紗里は風変わりな洗濯物に気づいた。 2階のベランダに並んでいるのは、大きさといい形といい、料理用のミトンそっくりに見える。けれど、キッチングッズとして売っているようなカラフルなものではなく、色がすべてベージュ系…

ゲシュタルト『ルビンの杯』と其角

ゲシュタルト心理学の重要な概念のひとつに、『図』と『地』という考え方があります。 《figure and ground》 ある物が他の物を背景として全体の中から浮き上がって明瞭に知覚されるとき、前者を図といい、背景に退く物を地という。 小学館『デジタル大辞泉…