かきがら掌編帖

数分で読み切れる和風ファンタジー*と、読書・心理・生活雑記のブログです。

彼岸花の不思議・山桜ミニ盆栽の鉢仕舞い

 

ラジオで気象予報士の方が、彼岸花は全国でほぼ一斉に咲くというお話をしていました。

開花前線が2ヶ月ほどかけて北上していく桜とは対照的です。

 

職場でランチタイム・ウォーキングをしている同僚から、彼岸花が咲いていると聞き、自分も写真が撮りたくなって、近場の公園まで行ってみました。

 

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↓↓↓ こちらは同僚の写真、華やかです。

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右側は白い彼岸花、群生していて美しい。↑↑↑

 

彼岸花の別名は多く、「曼珠沙華(まんじゅしゃげ)」が有名ですが、他にも「葉見ず花見ず」という呼び名もあるそうです。

確かに、地面から茎だけが伸びて花を咲かせていました。

成長サイクルは独特で、お彼岸が近くなると花芽のみが出てきて、短期間で伸びて開花します。1週間ほど咲いて花も茎も枯れたあと、10月以降に球根から葉が出て茂り、そのまま冬を越します。翌年の5月には地上部分がすべて枯れ、再び秋に花芽を出すのです。

 

植物は昼夜時間の長さを葉で感知して季節を知り、花芽を形成すると言いますが、花と葉が同時に見られない「葉見ず花見ず」の彼岸花には当てはまりません。

知れば知るほど、ミステリアスです。

専門家の研究によれば、彼岸花を冬期に温室で栽培すると、夏に葉が枯れず常緑性になり、花は咲かない。ゆえに、彼岸花の花芽分化には低温遭遇を必要とし、低温がバーナリゼーション(春化)として作用しているようだ、とのことです。

 

バーナリゼーションとは、「植物が冬の低温状況に一定期間さらされることによって、開花もしくは発芽能力が誘導されること」。

さて、3年近く前になりますが、種から山桜を育てるミニ盆栽にチャレンジしました。

 

toikimi.hateblo.jp

 

toikimi.hateblo.jp

 

このとき、種まき前の下準備として、山桜の種を冷蔵庫に入れ冬を疑似体験させる、ということをやったのですが、これも人為的なバーナリゼーションだったのかもしれません。

けれど、山桜は発芽せず、鉢を室内から室外へ移したり、休眠打破を試みたりしましたが、効果はありませんでした。

 

toikimi.hateblo.jp

 

放置と見守り8:2くらいの感じで時は過ぎ──、

先月の初旬、ふと「もう、いいかな」と思い立ち、鉢仕舞いすることにしました。

 

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寂しく残念な気持ちもありますが、「待てど暮らせど」の状態が終わって、少し心が軽くなりました。

 

 

いいことありそうな予感

 

今朝、kibikibi (id:kibikibinote) さんの記事で、大きくてきれいな虹のお写真を見て、

「いいことありそう」な気持ちになりました。

 

www.kibikibinote.com

 

数時間後、職場がざわざわしているので、何かと思ったら、もうすぐブルーインパルスが上空を通過するらしい!とのこと。

今いるビルに引っ越してきて十年になりますが、初めて屋上へ上りました。

(あ、スマホ忘れた)と思いつつ、待つことしばし。

美しいカラースモークの線を引きながら飛行するブルーインパルスを、この目に焼きつけることができました。

こんなふうに、わーわー騒ぎながら大喜びするのは、本当に久し振りです。

 

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画像はいっしょにいたスマホ撮影者の一人からもらいました。

 

いい予感が当たるのは嬉しいですね。

kibikibiさん、ありがとうございます。

 

 

 

ワクチン2回目

 

先週の金曜日、新型コロナウイルスワクチンの2回目接種を受けました。

職域接種なので、会場はグループ会社本社の医務室、ワクチンはモデルナです。 

前もって社内メールで、

「副反応の発生に備えて、接種翌日に休日休暇を充てることを推奨します。」

と連絡があり、せっかくなので土・日に続けて、月曜日も休むことにしました。

 

職場で先に済ませた人に聞くと、2回目の接種後、特に何もなかったという人は少数派で、発熱して1日から2日安静にしていたというケースが多い印象です。

解熱鎮痛薬は常備しているものの、副反応に備えて、他に何を用意すればいいのか……と考えていたところ、運よく、チャーコ (id:harienikki)さんの懇切丁寧な体験記を拝読することができました。

 

harienikki.hatenablog.com

 

チャーコさん、ありがとうございます。 

熟慮の末(笑)、スポーツドリンクとゼリー飲料、おでこに貼るタイプの冷却シート、レトルトのおかゆとアイスクリームを準備しました。

 

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ワクチン接種は午後3時過ぎ、職場に戻って定時まで勤務し、帰りがけに、前から気になっていた、手作りおにぎりとサンドイッチのお店であれこれ買い込みました。こういうときは、つい「財布のひもがゆるむ」みたいです。

晩ごはんを食べて(アルコールは控える)、いつもより1時間以上早く就寝。寝る前の体温は36.0度で平熱でした。

 

翌朝、36.8度と上がり始めていたので、すぐに多めの水で解熱剤を飲み、冷却シートを貼りました。

薬を飲んでも、熱はずっと37.3度前後でした。接種した腕の筋肉痛のような痛み、だるさと軽い頭痛があり、スポーツドリンクで水分補給をしながら、一日中ごろごろして過ごしました。

けれど、食欲はふだん通りだったので、前日買ったおにぎりとサンドイッチの残りも完食しました。ゼリー飲料とレトルトのおかゆは温存です。

翌々日、ワクチン接種から3日目には熱も下がり、通常の生活に戻れました。

貴重な実体験の情報を有効活用させていただき、おかげさまで軽めに済みました。

感謝です💖

 

ところで、1回目のとき「モデルナアーム」になりました。

モデルナのワクチン接種後、1週間くらい経ってから、接種した腕が赤く腫れ、かゆみや熱感が出てくる遅延性皮膚反応です。接種部位ではなく、少し離れた下の方が赤くなり、上腕の外側全体に広がった後、数日かけて徐々に引いていきました。

 

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同じフロアで職域接種した女性のうち「私もなった!」という人が複数いたので、発生率はけっこう高めなのかもしれません。

そのモデルナアーム仲間から「2回目は早く出る」と聞いていたのですが、本当にその通りで、接種から3日目の朝、早々と赤くなり、翌日には薄れ始めました。赤み、熱感は前回と同様でしたが、かゆみはほぼなく、かゆみ止めの薬を塗る必要もありませんでした。

 

今のところ、こんな感じです。

 

 

茅の輪くぐらせ(創作掌編)~銀ひげ師匠の魔法帖⑭~

 

 晶太が住む町の神社では、毎年6月の下旬になると、境内に茅の輪(ちのわ)が設置される。チガヤという草を束ねて作った、直径が3メートルくらいある大きな輪だ。これをくぐることで、身についた穢れが祓い清められ、疫病をまぬがれるのだという。

 

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 けれど今年の「茅の輪くぐり」は、感染拡大防止のため中止になった。

「苦渋の決断だね。無病息災を祈願する神事だというのに、多くの人が集まれば、かえって感染を広げることになりかねない……」

 銀ひげ師匠は、腕組みして顔をくもらせた。

 

 銀ひげさんは魔法使いだが、生業は書道教室の先生である。

 晶太はその書道教室の高学年クラスに通う生徒だけれど、ほんとうは魔法使いの弟子なのだ。

 この世のあらゆる物事には、それを司る神様が存在する。「八百万(やおよろず)の神」というわけだ。ウタと呼ばれる古い言葉を使って神様に挨拶し、合言葉を授かり、いろいろなことを「頼む」。晶太が毎日練習しているのは、そういう魔法だった。

 

「きっとチガヤの神様も、どうしたことかと思っているでしょうね?」

 と、晶太は聞いた。

 「そうだろうなぁ」

 いぶし銀のような色のひげを引っ張りながら、もの思いにふけっていた師匠が、突然、ひざをたたく。

「よし! こういう時こそ、フリーな立場の魔法使いの出番だぞ」

 

 次の日曜日、晶太たちは早朝から活動を開始した。

 まずは、師匠が「町いちばんのチガヤ群生地」と見当をつけた河原へ向かう。今にも雨が落ちてきそうな梅雨空の下、白い綿毛の花穂をつけたチガヤが一面に広がり、風になびいていた。

「チガヤは昔から日本に生えている植物で、万葉集の和歌にも詠まれているんだよ。繁殖力が旺盛で、薬草としても知られている」

 銀ひげさんの言葉にうなずきながら、晶太はチガヤの原を見わたした。

「強くて親しみやすい草ですね」

 

 魔法使いが神様と交流するときは、たとえ対等でなくても、おたがい認め合っていることが大切だ。

 ここに生えているすべてのチガヤに神様はいるけれど、一本ずつだと、無数で細かすぎる。だから、大きな集合体にまとまっている神様を見つけなければならない。魔法使いの力量によって、相手の神様のスケールも変わってくるから、晶太と銀ひげ師匠は別々に動くことにした。

 手分けしてひと巡りした後は、次の群落に移動する。晶太たちは半日かけて、町のあちこちを回った。 

 

「どうだ晶太、気さくな神様ばかりだったろう?」

 帰り道、銀ひげ師匠が機嫌よく言った。

「はい、茅の輪くぐりが中止になってしまったことを言うと、すぐに『わかった、任せよ』って感じでした。でも、明日は何が起こるんでしょう?」

「楽しみだな。見逃さないように、これを腰に下げておくといい」

 といって、師匠がくれたのは、チガヤで作った小さな輪っかだった。晶太は礼を言って受け取ると、ズボンのベルト通しに結びつけた。

 

 翌朝、学校へ行くと、校門の前に巨大な茅の輪が立っていた。

 みんな少しも気づかずに、輪をくぐり抜けている。

(すごいな、こういうことなんだ……)

 晶太は少し緊張しながら、茅の輪をくぐって登校した。

 茅の輪をくぐったからといって、クラスの仲間がたちまち元気になったというわけでもなく、いつもの通りだ。けれど、いつも通りが大切だということを、晶太は知っている。

 

 帰りにはもう、校門の茅の輪はなくなっていたけれど、町を歩くと、スーパーマーケットやコンビニなど、たくさんの人が利用する店の自動ドアの前に、茅の輪が立っているのを見つけることができた。

(みんな、銀ひげさんがチガヤの神様に頼んだものだ。ぼくの茅の輪は、ずっと小さいだろうから、人がくぐるのはむずかしいんじゃないかな)

 ちょっと心配になる。

 商店街を抜けて、人通りの少ない住宅地に入ったとき、晶太は思わず足を止めた。道の先に、直径60センチほどの茅の輪が、はずむように転がっていくのを発見したのだ。

(あれはきっと、ぼくがお願いした神様の茅の輪だ。どこへ行くんだろう?)

 小走りになって追いかけた。すぐに茅の輪は道からそれて、どこかの家へ入っていく。近づいてそっとのぞき込むと、庭先に椅子を置いて座り、居眠りをしているおばあさんの姿が見えた。

 茅の輪が、おばあさんの頭の真上へふわりと舞いあがる。

 そのまま、輪の中をくぐらせるように下りて、足もとから抜け出てきた。

 おばあさんは、気持ちよさそうに眠ったままだ。

 

 道に戻った茅の輪は、また、はずみをつけて転がり出した。

 とちゅうで、塀の上から飛び降りてきた猫に、タイミングを合わせてくぐらせたりしながら、どんどん遠ざかる。

 晶太は何だか胸がいっぱいになって、茅の輪が見えなくなるまで見送っていた。

 

 

 

心配事2つから…

 

心配事2つから解放されました。

 

1つは、ワクチン接種1回目。

先週の金曜日、新型コロナウイルスワクチンの職域接種を受けてきました。

会場はグループ会社本社の医務室で、ワクチンはモデルナです。

接種期間の最終日だったので、すでに接種を済ませた職場の人たちから、受付や注射、副反応について、いろいろ情報を仕入れて臨みました。

 

受付では、あらかじめ記入していった予診票のチェックと本人確認があり、その後、産業医の先生による、体調とアレルギーに関しての問診を経て、接種という流れです。

ルートごとに間隔をあけて置かれた椅子が並び、誘導するスタッフがいて、混乱なく、整然と進みました。筋肉注射というと痛いイメージがあったのですが、実際には、まったくと言っていいほど痛みはありませんでした。

接種後は各自で15分間計って待機し、何事もなければ、そのまま退室して職場に戻ります。

 

心配だったのは副反応です。私が直接話を聞いたの十数人ですが、1回目の接種で、副反応が全然なかったという人が1人、強いアレルギー症状が出て3日間寝込んだ人が1人、残りは、注射した部位の痛みと全身の倦怠感という人がほとんどでした。

結果としては、私もその他大勢の1人になりました。

接種当日は、疲れを感じて早寝し、翌日、腕に筋肉痛のような痛みを感じつつ、平熱を確認して外出しました。法事的な集まり(個人宅で宴会)があったのです。

飲酒は控え目にしたつもりだったのですが、帰宅後、具合が悪くなりました。熱はないものの頭が痛く、胃痛もあり、身体がだるくて仕方ありません。

とりあえずシャワーを浴びて横になり、しばらく休みました。

食欲はなかったのですが、おにぎりを1個食べたら少し気分が良くなったので、寝支度をして就寝しました。2日連続して早寝です。

3日目には腕の痛み、倦怠感も薄れて、4日目はすっかり通常に戻りました。

 

 

もう1つの心配事は「再検査」です。

先月受診した婦人科検診の結果が送られてきたのですが、それが「D2:すみやかに精密検査を受けて下さい」でした。

毎年受けている検診ではありますが、前回、前々回とも「A:異常を認められません」だったのに、「B:軽度の異常」「C:経過観察」をすっ飛ばして、いきなり「D2」です。(ちなみに「D1」は「要治療」)

「すみやかに」という言葉にインパクトがあって、血の気が引いてしまいました。

 

受診した健診専門医療機関に電話して、専門外来を予約しました。2週間後の「再検査」まで、ずっと落ち着かない毎日でした。いつもと変わらない生活をしていても、バックグラウンドでは「心配」というプログラムが動き続け、重苦しい感じです。

「心配事の9割は起こらない」と言われれば、残り1割にフォーカスする性格なので、とりあえず最悪の事態が浮かんできて、頭から離れなくなりました。

けれど、マインドフルネスヨーガなどの瞑想中は、一時的に気持ちが落ち着くのです。

このまま瞑想の練習を続けて、だんだん上達していけば、あまり心配事に振り回されない性格に変わるかも……と思うと、モチベーションが上がります。

 

そして昨日、精密検査を受けてきました。

結果は、異常はあるけれど現時点では心配なし、だったので一安心です。

ささやかに、ビールで祝杯をあげました。

 

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〈香る〉エール

 

 

play


しばらくのあいだ、いろいろなことわざや名言を集めていたのですが、紫色好き仲間のEmily (id:Emily-Ryu)さんがスヌーピー好きなのを思い出し、検索してみたら胸に響くことばがありました。

 

 ルーシーという女の子とスヌーピーとのやりとりです。

ルーシー「時々あなたは、どうして犬なんかでいられるのかと思うわ…」
 Sometimes I wonder how you can stand being just a dog ..

スヌーピー「配られたカードで勝負するしかないのさ…それがどういう意味であれ」

 You play with the cards you’re dealt ..whatever that means

 

自分にはどんなカードが配られていて、どんなふうに使っているのか、いないのか…。

私はつい、不足しているところ(配られなかったカード)ばかりに目が向く傾向があるので、このスヌーピーの名言は、ぴりっとして爽快でした。

 

「play」という英語は、「楽しむ」「遊ぶ」から、ゲームやスポーツ、演奏、演技などをすることまで、幅広い意味を持っていて面白いです。

 

海外ドラマ『クリミナル・マインドFBI行動分析課』では、毎回始まりや終わりのシーンで、格言のナレーションが入りますが、シーズン9第5話「66号線」の格言、

「人生は夢、かなえなさい(Life is a dream, realize it)」

これは、“Life is..”で始まるマザー・テレサの言葉の1センテンスです。

 

人生は好機、恩恵を受け取りなさい
 Life is an opportunity, benefit from it

人生は美しいもの、称賛しなさい
 Life is beauty, admire it

人生は至福、味わいなさい
 Life is bliss, taste it

人生は夢、かなえなさい
 Life is a dream, realize it

人生は挑戦、いどみなさい
 Life is a challenge, meet it

人生は義務、全うしなさい
 Life is a duty, complete it

人生はゲーム、楽しみなさい
 Life is a game, play it

人生は約束、果たしなさい
 Life is a promise, fulfill it

人生は悲しみ、克服しなさい
 Life is sorrow, overcome it

人生は歌、歌いなさい
 Life is a song, sing it

人生は苦闘、受け入れなさい
 Life is a struggle, accept it

人生は悲劇、立ち向かいなさい
 Life is a tragedy, confront it

人生は冒険、挑戦しなさい
 Life is an adventure, dare it

人生は幸運、つかみ取りなさい
 Life is luck, make it

人生はあまりにも貴重なもの、壊してはいけません
 Life is too precious, do not destroy it

人生は人生、勝ち取りなさい
 Life is life, fight for it

 

私は「人生はゲーム、楽しみなさい(Life is a game, play it)」が好きで、よく頭に浮かびます。この「play」の意味も、リラックスして楽しむ、から、身を投じて勝負する、まで幅広い感じです。

 

さて、スヌーピーといえば、

「でつ」

という平仮名2字の顔文字で表せるそうです。スヌーピーの顔、見えてきますか?

 

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濁点が目で、「つ」が鼻です。

ちょっと、描き足してみました。

 

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紫色のマーカーがなかったので、ピンクと水色を重ねて。

 

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反対向きプレイ(笑)。

あまり似ていないかもですが、雰囲気が伝われば幸いです。

 

この記事を書いた記念にスヌーピーグッズが欲しくなり、ちょうど長めサイズのスプーンが必要だったので、探してみたら見つかりました。

 

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和風スプーン(18.5cm)、やっぱり本物はかわいいですね♡

 

 

ネガティブ・ルーレット(創作掌編)

 

 就職を機に一人暮らしを始めた兄は、「便りがないのは良い便り」とでも言うように、めったに連絡を寄こさなかった。

 けれども、趣味にしているフリーソフト(無料かつ無償で利用できるソフトウェア)制作のおかげで、どうやら元気に暮らしているらしいとわかるのだ。

 私は、フリーソフトの紹介サイトで、お気に入りの制作者として、兄のことを登録している。すると、新作のお知らせや、発表済みソフトの更新情報などの通知が届くので、結果的に生存確認ができるというわけである。

 

 兄が制作した最初のソフトウェアは、『逆引き花ことば事典』だった。

 当時、花屋でアルバイトしていた私の頼みに応じて作ってくれたものだ。

「愛」「友情」「感謝」などの単語だけでなく、

「遠くへ旅立っていく片想いの相手を笑顔で見送る」とか、

「ケンカしてSNSをブロックされてしまった恋人に許しを請う」というような、特定の状況に即した花の候補を、ファジー検索で探し出してくれるという、便利なアプリだ。

 それ以来、無くてもまったく困らないけれど、あればちょっと役に立つかもしれない、というタイプのフリーソフトを、こつこつと作り続けている。時おり、サイトのコメント欄に寄せられる「ありがとう」のメッセージ、フィードバックや改良リクエストなどが、モチベーションになっているようだ。

 

  ある日、お気に入り制作者の新着ソフトあり、との通知が来ていたので、さっそくダウンロードした。

 名称『ネガティブ・ルーレット』

 ルーレット型のおみくじソフトだ。画面上のボタン操作でルーレットを回し、好きなタイミングで止めると、結果が文字と音声で知らされる。

 とりあえずやってみて、最初に出たのは、

【チャンスの神には前髪しかない】

 という言葉だった。

 

 さらに回してみると、

【一寸先は闇】

【後悔先に立たず】

【急いては事を仕損じる】

【万事休す】

【諦めは心の養生】

 などの、ことわざや、

【前途多難】【意気消沈】【疑心暗鬼】【自業自得】【風前之灯】

 という四文字熟語。

 

 他にも、

【ふたつよいこと、さてないものよ】(古い俗謡)

【​咳をしてもひとり】(自由律俳句 尾崎放哉)

【「最悪だ」などと言えるうちは、まだ最悪ではない】(『リア王ウィリアム・シェイクスピア

【久しくとどまりたるためしなし】(『方丈記鴨長明

【いちばんいいことを希望して、いちばんわるいことがおこってもおどろくなってさ】(リトルミイムーミン谷の仲間たち』トーベ・ヤンソン

 ──などなど、ジャンルを問わない。

 

 共通している点は、ソフト名の通り「ネガティブ」だ。いくらルーレットを回しても、「当たり!」と言う感じの、明るくポジティブな言葉は出てこない。

 ただ、読み上げる声は優しくて、耳に心地よかった。合成音声ソフトで作ったのだろう、やや棒読みだけれども、癒し効果の高い声だ。かなり苦心して調節したに違いない。

(お兄ちゃんとしては異色作だ。どうしちゃったのかな……)

 少し心配になった私は、兄に電話して、晩ごはんの約束を取りつけた。

 

 会うのは3ヶ月振り、兄が駅の階段を転げ落ち、救急車で運ばれて以来である。

 頭部を打ったということでCT検査をしたが異常はなく、幸いにも、軽い打撲傷だけで済んだ。けれど、母と私が病院に駆けつけると、兄は意気消沈してうなだれていた。

 聞けば、その日は資格取得のため定期的に通っていた、講習会の最終日だったそうだ。定時退社する直前、上司に呼び止められて出遅れ、かなり焦っていたため、全速力で駆け下りようとした階段を踏み外したらしい。(急いては事を仕損じる)

 

 待ち合わせした店に行くと、兄はもう先に来ていた。

「お待たせ。その後、ケガの調子はどう?」

「ああ、すっかり大丈夫だよ。自業自得とはいえ、えらい目にあったもんだ。でも、講習会の事務局に事情を説明したら、オンラインで補習させてもらえて、資格も無事取れた」

「よかったね」

 笑みを浮かべてうなずいたけれど、あまり嬉しそうじゃない。いつになく食欲もないようだ。

 頃合いを見計らって聞いてみる。

「新作の『ネガティブ・ルーレット』やってみたよ。落ち込んでるときは、変に明るく励まされるより、ああいう言葉のほうが沁みるかもしれないね。でも、もしかして、なんかイヤなことでもあった?」

 

 すると兄は、ぽつりぽつり話し始めた。

 

 講習会で席が隣り合わせになった女性に、ひと目で好意を持ったこと。

 話してみると楽しくて、相手も自分に親しみを感じてくれている様子なので、最終日には連絡先を交換したいと思っていたこと。

 それなのに、事故で出席できなくなり、縁が途切れてしまったこと──。

「講習会の事務局にも問い合わせてみたけれど、個人情報だからね、当然、教えてもらえなかった。こんなことなら、早めに名刺交換しておけばよかったよ」(後悔先に立たず)

「でも、本名を知っていれば、探し出せる可能性もあるんじゃない?」

「いや、わかっているのは名字だけなんだ。しかも、佐藤さん」

 私たちも「田中」だけれど、それ以上にメジャーな名字である。

 

「一度、雑談しているとき、名字の話になったんだ。佐藤とか田中って、どこに行ってもひとりやふたりいるよね、とか、でも僕の名前は回文になっているから、その点では珍しいんだ、とかね」

 兄の姓名は、田中奏多(たなか・かなた)。最初から読んでも、最後から読んでも同じ、回文の名前なのだ。

「今にして思えば、自然な流れで佐藤さんのファーストネームを聞けるチャンスだったのに……。つい、会社で同期の回文名仲間、古池景子(こいけ・けいこ)の話なんかして、しかも彼女は学生結婚で古池姓になったのだから、自分と違ってもともと回文だったわけじゃない、なんてどうでもいいことをしゃべっているうちに、タイミングを逸してしまった!」

 そう言って、兄は頭を抱えた。(チャンスの神には前髪しかない)

 

(お兄ちゃんって、こんなめんどくさい人だったっけ?)

 と内心思ったが、そもそも恋愛とはそういうものかもしれない。

「実は、あのルーレットのテキスト読み上げ音声、佐藤さんの声をモデルにしたんだ」

「そうなんだ、優しい声だから癒されるよね」

「ありがとう。つくづく趣味を持っててよかったと思うよ。ソフトウェア作りに没頭しているうちに、だんだん心が落ち着いてきて、あれはもう仕方ないことだったんだ……と、考えられるようになった。おかげで、ずいぶん気がラクになったよ」(諦めは心の養生)

  といって、兄は寂しく笑った。

 

 

 ところが、その後、事態は急展開したのだった。

 例の回文名仲間の古池景子さんが、取引先の新しい担当者と名刺交換したところ、相手の女性から、

「お名前が回文なんですね。もしかして、田中奏多さんという方をご存じではありませんか?」

 と、尋ねられたのである。

「これは奇遇だ!」ということになり、佐藤さんと古池さん、そして兄も交えて3人で、近々食事に行く話がまとまったそうだ。

 

 まもなく、『ネガティブ・ルーレット』のアップデートのお知らせが届いた。

 どのあたりが更新されたのかと思い、チェックしてみたら、

 

【チャンスの神には前髪しかない、とは限らない

 

 と、変わっていた。 

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