かきがら掌編帖

数分で読み切れる和風ファンタジー*と、読書・心理・生活雑記のブログです。

2018-06-01から1ヶ月間の記事一覧

石の名前と言い伝え

天然石、いわゆるパワーストーンに凝っていた時期があります。 ネットショップでビーズ等を購入し、ブログや書籍で情報を集め、鉱物図鑑を愛読するなど、「石三昧」な日々を送っていました。 記憶力の衰えを痛感するようになって久しいというのに、数年前に…

ハヤさんの昔語り〔三〕~石工になった長太郎~(創作掌編)

人から聞いたばかりの「セレンディピティ」という言葉を、受け売りで解説し始めると、 「舌をかみそうな言葉ですね」 カウンターの向こうでコーヒーを淹れながら、店主のハヤさんが言った。 セレンディピティは、18世紀のイギリスの作家ウォルポールの造語…

父が少年だった頃

父が亡くなるひと月ほど前のことです。 私は、布団に横たわる父のそばに居て、テレビでも見ていたのだと思います。 どういうきっかけだったのか、父が思い出話を始めました。 少年の頃、1人で自転車に乗って遠出した話でした。 塩の効いたおにぎりと水筒を…

ベール(創作掌編)

ついさっき結婚を約束したばかりの僕と初音は、降りしきる雨のなかを歩いていた。 (あれ、いったい僕たちは、どこへ行こうとしているんだろう?) 傘を打つ雨音で、ふと我に返る。 フレンチレストランでプロポーズして、初音が承諾してくれたあと、極度の緊…

雨の日にながめる川、数えたカエル

今週のお題「雨の日の過ごし方」 何度か引っ越していますが、いつも近所には川がありました。 さらさら流れる小川ではなく、車道と歩道に分かれた道路橋から見おろす川です。 現在も毎日のように、橋を渡って通勤しています。 雨の日にながめる川には、趣が…

ハヤさんの昔語り〔二〕~ザシキワラシ~(創作掌編)

にぎやかな6名様が、財布を取り出し立ちあがるのを見て、私はほっとした。これでようやく、ハヤさんの昔語りを聞けるというものだ。 テーブルの片付けが済んだ頃合いを見計らって、コーヒーのお替りをオーダーする。 「ハヤさん、このあいだ聞かせてもらっ…

日々のゲシュタルト

ゲシュタルト療法のワークを体験学習しているとき、たとえば「ことばの言い換え」のような、ちょっとした実践を、よくファシリテーターに提案されました。 ワーク中に繰り返しやっているうち、だんだん普段使いするようになって、習慣化してきたものが3つほ…

ハヤさんの昔語り~神隠し~(創作掌編)

在宅の仕事が一段落つくと、近所の珈琲店に出かけるのが、私の楽しみのひとつだった。なるべく空いてそうな時間帯を選んで行くことに決めている。 店主のハヤさんは、親しくなると面白い話を聞かせてくれるようになった。 何と言っても彼は、自分の前世を思…