かきがら掌編帖

数分で読み切れる和風ファンタジー*と、読書・心理・生活雑記のブログです。

2018-01-01から1年間の記事一覧

天狗の下駄(創作掌編)~ハヤさんの昔語り#2-4~

仕事の打ち合わせから戻り、珈琲店のドアを開けると、ハヤさんが「いらっしゃいませ」ではなく、「おかえりなさい」と言った。 ちょうどお客が途切れたタイミングだったようだ。 なんとなく嬉しい気分でカウンターへ向かう途中、ふと、見慣れない物が目に留…

ゲシュタルト療法~変化の逆説~

ゲシュタルト療法のワークで時折、「変化の逆説」という言葉を耳にしました。 簡単に述べると、「人は、自分でない者になろうとする時ではなく、ありのままの自分になる時に変容が起こる」ということである。つまり、変容は自分あるいは他者がその人を変えよ…

スケアクロウ(創作掌編)~銀ひげ師匠の魔法帖⑥~

銀ひげ師匠の書道教室で最年少のゆなちゃんから、相談事があった。 「話を聞いたかぎりでは、どうも魔法がらみに思える。それより気になるのが、なぜ私に、この手の相談を持ちかけてきたか、ということなんだが……」 「ひょっとして、師匠の正体を見抜いたと…

『骨盤にきく』~「身がまま」に生きる知恵~

新刊コーナーに並べられていた本の、表紙の絵と文字に引かれて手に取ったことをよく覚えています。 骨盤にきく―気持ちよく眠り、集中力を高める整体入門 (文春文庫) 作者: 片山洋次郎 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2009/04/10 メディア: 文庫 購入: 10…

『植物はそこまで知っている』~ウチノキについて~

20年前のこと。当時働いていたオフィスで、園芸好きの社員が空き瓶を利用した水栽培を始めました。 社内に置いてある観葉植物の、伸びた茎や小枝をカットして、水につけておくと根が生えてきます。 「いずれ持ち帰って、鉢に植え替える」と言っていたので…

春を告げる焚き火(創作掌編)

ある資源フォーラムにおいて、大変ユニークな発表があった。 テーマは「焚き火と燃料費の相関研究」である。 調査対象となった「A地域」は、定住者の多い郊外の地区で、落葉樹が多く植わっており、晩秋から初冬にかけて焚き火(落ち葉焚き)が盛んに行われて…

トイレの夢パターンの話

今日、昼休みに職場の同僚と喋っていて、 『就寝中、トイレに行きたくなったとき、見る夢のパターン』 についての話で盛り上がり、おもしろかったので書き留めておきたい。 敬体ではなく常体で書きたい内容である。 話し相手の彼女のパターンは、とにかく「…

『クリミナル・マインド』の格言(補足)日本のことわざ

以前、海外ドラマ『クリミナル・マインド FBI行動分析課』の、始まりや終わりのシーンで引用される格言について記事を書いたのですが──、 toikimi.hateblo.jp ➃英訳→再和訳で原形がわからなくなった気がすることわざ。 シーズン8 第6話「殺しの教室」独学で…

種から山桜を育てる『ミニ盆栽』

『かえるさんの星占いらぼらとりー』というブログで、日々、ヒントとギフトをいだたいていますが、このあいだ、趣味に関してのキーワード、 “植物等を「育てる」、チェックをする” を見たとき、あることを思い出しました。 www.kaerusan01.com 一昨年、友人…

「カラス語」の研究

ずいぶん前のことですが、カラスのことばを聞き分ける女性を主人公に、掌編を書きました。toikimi.hateblo.jp 先日、朝の時間にラジオを流していたら、旬の話題のコーナーで「カラス語」の研究者について取りあげていたので、引き込まれて傾聴しました。 「…

魔法ラベル(創作掌編)

ハロウィンの仮装パーティに招かれた佳奈は、衣装を買いに出かけた。 店内をひととおり見て回り、魔女になろうと決める。帽子とマントのセットを選んで、レジへ向かう途中、パーティグッズのコーナーで足が止まった。 『魔法ラベル』というのが気になる。 他…

「いろは歌」いろいろ

アルファベット26文字をすべて使って、意味のある短文にしたものをパングラム(pangram)と呼ぶそうですが、「いろは歌」は、美しい語句と深い意味とを兼ね備えた、ひらがな版パングラムの最高峰といえます。 色はにほへど 散りぬるを 我が世たれぞ 常ならむ…

さかな顔の姫君(創作掌編)

※ 先日、『雷理さん』の記事を拝読し、ブクマコメントのやりとりから生まれた掌編です。www.rairi.xyz 静かな水底で、ヒメマスとキングサーモン(和名:マスノスケ)が、朝のあいさつを交わしています。 「おはよう、ぼくの姫君。いい夢を見たかい?」 「お…

田房永子さん『呪詛抜きダイエット』のゲシュタルト療法

ゲシュタルト療法のプレトレーニング期間中は、ずっと単発のワークショップに参加していたので、「ゲシュタルトのワークショップは初めて」という方と、ご一緒する機会が何度かありました。 そのなかのひとりから、田房永子さんのコミックエッセイを読んで、…

おみやげ(創作掌編)~銀ひげ師匠の魔法帖⑤~

MNJの自然災害対策行動に初参加して1ヶ月あまり、ようやく帰ってきた銀ひげ師匠の様子は変わりはてていた。 ひげは伸び放題でボサボサ、顔も手も日に焼けて、小さな傷や虫刺されの跡がいくつも見える。 (こんなんで明日からの書道教室、だいじょうぶだろう…

星新一さんの世界『きまぐれ星のメモ』

「ショートショートの神様」星新一さんのことを教えてくれたのは、高校時代の同級生でした。 文庫本を何冊も買って読み耽りましたが、長い長い年月を経た今、手元に残っているのはエッセイ集1冊です。 きまぐれ星のメモ (角川文庫) 作者: 星新一 出版社/メ…

ソウルメイト(創作掌編)~ハヤさんの昔語り#2-3~

家で仕事をするのは好きだけれど、まったく外へ出なかった日は、もの足りない気持ちになる。 そう言うと、ハヤさんが意味ありげにうなずいて答えた。 「閉じ込められた魂は、自由を求めるものです。『憧れる』のもとになった古語『あくがる』には、魂が体か…

HSP~炭鉱のカナリヤ以外の道~

「HSP」とは、Highly Sensitive Person(人一倍敏感な人)の略で、エレイン・N・アーロン博士が提唱した概念です。 1991年に高敏感性(高感受性)に関する研究を始め、現在も続けているアーロン博士は、ご自身がHSPであり、また、Highly Sensitive Child(HS…

フライング・ブーケ(創作掌編)

僕の大好きな人、みのりさんが、チャリティコンサートの招待券をくれた。 みのりさんは、主催者側のスタッフなので、一緒に客席に座れるわけではないけれど、コンサート終了後に、夕食の約束をとりつけることができた。 クラシックのコンサートだ。曲目は、…

音楽隊の音楽会②(陸自)

少し前のことになりますが、9月1日に、すみだトリフォニー大ホールで開催された、 『陸上自衛隊中央音楽隊 第155回定期演奏会』へ行ってきました。 音楽隊のコンサートは、今年2月の海自に続き2回目です。 最高峰の吹奏楽を無料で鑑賞できる演奏会なので…

いつか…(創作掌編)~銀ひげ師匠の魔法帖④~

toikimi.hateblo.jp 銀ひげ師匠が『魔法使いネットワーク・ジャパン(MNJ)』の自然災害対策行動に参加しているあいだ、晶太は影武者たちと一緒に留守番していた。 「灰一」と「紺二」は、師匠が影武者の魔法をかけた作務衣で、洗濯のため2日ごとに交替する…

しばらくスマホのない生活

9月1日の午後、スマホが突然、ネットワークに接続できなくなりました。 メールもLINEもつながりません。ネットワーク設定をやり直しても、再起動してみてもダメでした。 予告らしきものは、ずいぶん前からありました。 ブラウザでYahoo!天気のページを開く…

月見ヶ池(創作掌編)~ハヤさんの昔語り#2-2~

在宅の仕事でアイデアに詰まり、気分転換を兼ねて散歩に出た。 「いい月夜ですね」 といって、ハヤさんもついてくる。 中天にかかる月は明るく、私は額のあたりに、ひんやりと澄んだ光を感じながら歩いた。 「なんとなく、頭が冴えてきたような気がする」 「…

37兆2千億個の味方『はたらく細胞』

今年の夏は、アレルギー性の鼻炎に悩まされています。 医者に診てもらっていないので原因は不明ですが、「猛暑アレルギー」かもしれません。 久しぶりに薬局へ鼻炎薬を買いにいったら、抗ヒスタミン薬の中でも第2世代と呼ばれる、眠気や口の乾きが出にくい…

断片をたどって(創作掌編)

さっきまで騒がしさが嘘のように、静かになった。 私は、 ほっとして歩きつづける。不思議なくらい身も心も軽く、気分は上々だ。 このところ、何かと大変だったけれど、済んでしまえばどうということもない。結局また、取り越し苦労だっだのだろう。 今はた…

ユングの臨死体験

以前から臨死体験の話には興味を持っていましたが、両親が他界したことで、関心が深まったように思います。 「死の受容のプロセス(否認~怒り~取引~抑うつ~受容)」で有名なエリザベス・キュブラー・ロス博士の本を読むうち、さらに広範囲に知りたくなり…

影武者(創作掌編)~銀ひげ師匠の魔法帖③~

【連作掌編の第3話です】 toikimi.hateblo.jp 銀ひげ師匠のところに、初めて、『魔法使いネットワーク・ジャパン(MNJ)』から、自然災害対策行動のお知らせが来た。 群れることを好まない魔法使いたちも、たまに集うのは歓迎するみたいだ。 師匠は感無量で…

ドラマ『パンとスープとネコ日和』になごみました。

『パンとスープとネコ日和』は群ようこさんの小説です。 2013年にWOWWOWの連続ドラマ(全4回)として放送されましたが、私は先日、Huluで視聴したところです。 【ネタバレ注意】 WOWWOWウェブサイトのストーリー紹介 ずっと母との2人暮らしだったアキコ(…

仲直りの怪談(創作掌編)~ハヤさんの昔語り#2-1~

私は、慎重に準備を整えてから行動に移す性格だが、ハヤさんと暮らし始めたときは、全く違っていた。 必要最小限の日数で、追い立てられるように珈琲店の2階へ引っ越してきたのだ。 新婚家庭的な要素は皆無、奇妙な共同生活の開幕である。 いくら宿命の相手…

伝聞怪談

時節柄、そこかしこで怪談のブログ記事を目にしました。つい、検索もしました。 怖がりの怪談好きなので、興味津々で拝読しては、夜中に思い出して戦慄しています。 私自身は霊感が強くありませんが、職場に霊感体質の人がいて、たまに怖い話で盛り上がって…