「HSP」とは、Highly Sensitive Person(人一倍敏感な人)の略で、エレイン・N・アーロン博士が提唱した概念です。
1991年に高敏感性(高感受性)に関する研究を始め、現在も続けているアーロン博士は、ご自身がHSPであり、また、Highly Sensitive Child(HSC=人一倍敏感な子)の親でもあります。
- 作者: エレイン・N・アーロン,明橋大二
- 出版社/メーカー: 1万年堂出版
- 発売日: 2015/02/21
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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実は、「敏感な人」の研究は、50年ほど前からありましたが、「敏感」という言葉ではなく、「感覚的な刺激を受けやすい」「恥ずかしがり屋」「内向的」「怖がり」「引っ込み思案」「消極的」「臆病」と表現されてきました。この本を書いた理由の一つは、敏感な子どもに対し、このような言葉を使ってほしくない、もっと正確で、敏感な気質を新しい角度からとらえるような名前が欲しいと思ったからです。
アーロン博士の著作『ひといちばい敏感な子』には、その子供がHSCかどうか知るためのチェックリストが載っています。
たとえば、
・すぐにびっくりする
・服の布地がチクチクしたり、靴下の縫い目や服のラベルが肌に当たったりするのを嫌がる
・しつけは、強い罰よりも、優しい注意のほうが効果がある
・親の心を読む
・ユーモアのセンスがある
・うるさい場所を嫌がる
・細かいこと(物の移動、人の外見の変化など)に気づく
・石橋をたたいて渡る
・物事を深く考える
……
……
などなど、23項目にわたるリストです。
また、アーロン博士は、HSPの根底にある性質には「4つの面がある」と説明しています。
1.深く処理する
2.過剰に刺激を受けやすい
3.感情反応が強く、共感力が高い
4.ささいな刺激を察知する
この4つの面が全て存在するということが特徴的で、たとえ感覚が過敏な人であっても、4つのうち1つでも当てはまらないなら、おそらくHSPではないというのです。
『ひといちばい敏感な子』の訳者、明橋大二さんは、30年近く、心療内科医、スクールカウンセラーとして、さまざまな子供たちを診ていくうちに、同じ環境でも、それをあまり意に介さず流せる子と、敏感に反応する子がいるということ、親や他人の気持ちを敏感に察知して、相手に合わせた行動を執る子と、マイペースな子がいるということに気づきました。
敏感な子は、大人にとっては、ある意味、いい子だけれど、本人としては、けっこうしんどい生き方をしています。そのしんどさが積もり積もった時、身体や行動上の、さまざまなSOSとして出してくることもあるのではないか。
それらの子供や、若い人たちに、
「この世には、人一倍敏感な人というのがいるんだよ」と紹介すると、驚いて、
「自分は全くそのとおりだ」と言うのです。
そんな時に、アーロン博士の「HSP」という言葉を知り、強く共感を覚えたのだそうです。
私自身も、アーロン博士の本を読み、「自分は全くそのとおりだ」と思った一人です。
昔からずっと、部屋着のTシャツを裏返しに着ている謎が解けました(笑)
(タグを切り取っても、その「切り口」が当たるのが嫌で、気の持ちようだけではなく、時には皮膚が赤く腫れたりします)
動揺しそうな状況を回避することや、定期的に一人になる時間を確保することを、普段の生活で最優先してきた理由もわかりました。
さて、非常に興味深いことに、HSPと呼ばれる人たちの特性は生まれ持ったもので、どの文化でも一定の割合(15%~20%)存在し、それは人間だけにとどまりません。
この特性がハエから鳥・魚・犬・猫・馬、そして霊長類にまで及ぶ100以上の種に存在することがわかっており、行動を起こす前に注意深くなるという、生物としての生き残り戦略であるといわれています。
HSPはまた、人類の存続にとって良くない変化が起こりかけたとき、いち早く感じ取り警鐘を鳴らす「炭鉱のカナリヤ」の役割を担っているのではないか、とも考えられています。
その昔、炭鉱において発生する、有毒ガス早期発見のための警報として使用されたという「炭鉱のカナリヤ」。
人類のために重要な価値をもつ役割だと思います。
しかし、一般個人としてはどうなのだろうと考えたとき、
『HSCを育てることは、人生で最大の、そして最高に幸せな挑戦です』
という、アーロン博士の言葉が指針になるかもしれません。