かきがら掌編帖

数分で読み切れる和風ファンタジー*と、読書・心理・生活雑記のブログです。

2018-03-01から1ヶ月間の記事一覧

桜つながり

桜の記事に画像を添えたいと思い、写真を撮りに行きました。 慣れない撮影を済ませて振り返ると、ちょっとした人だかりが出来ていたのでびっくり。あわててその場を離れました。 ちょうど、お昼の12時になるところです。 後から知ったのですが、桜の手前に…

冬に逆もどり(創作掌編)

春分の日も過ぎて、もう大丈夫と思っていた矢先だった。 「真冬のような寒さです。ところによっては雪が舞うかもしれません」とか、 「昨日との気温差は10度以上」など、気象情報の声がテレビからあふれてくる。 千佳は、冬のコートをクローゼットの奥から…

お彼岸 遠回りした思い出

母方の祖父は、私がものごころ付く前に他界しました。記憶に残っている面影は写真のものだけですが、母からよく話を聞いていたので近しく感じます。 祖父は石屋職人でした。近所の悪戯小僧を大声で叱り飛ばす一方、母にはとても優しかったそうです。 骨太で…

雲と遊ぶ(創作掌編)

晴天の日曜日、香澄は午後になってから、近くの河川敷へ出かけた。 都会の端を横切って流れる川は、再開発が進んで遊歩道も完備されている。けれど香澄は、少しだけ残った土手のほうが好きだった。 立ち枯れしている葦(ヨシ)の陰に座ると、日々のわずらわ…

蛇口をさがしてみよう

春の嵐で降り続いた雨が、明け方になってあがりはじめた、金曜日の朝のことです。 ベランダに面した窓を開けると、排水用の溝いっぱいに雨水が溜まっていました。 コンパクトなベランダなので、隅にある排水口はエアコン室外機の陰になってほとんど見えませ…

スロウメール(創作掌編)

年末は忙しすぎて、部屋の大掃除もままならなかった。 星葉が「一時的な書類保管箱」の整理に手をつけたのは、1月も半ばを過ぎてからのことだ。 この1年間に溜まった箱いっぱいの紙片や印刷物を、内容を確かめながら分類していく。ほとんどの書類は、必要…

5軒めで見つけた「ぬ」

ふとしたことから「午前(ごぜん)様」という言葉を思い出しました。 昔、父の帰宅が宴会などで夜中の12時過ぎになったとき、母が使っていた言葉です。 「心配していた。もう少し早く帰ってきてほしい」という気持ちを、やんわりと伝える言い方でした。 「…

庭木戸の音(創作掌編)

サトシの母親は、小鳥の声でその日の天気がわかるから、洗濯物を干したまま出かけても平気だった。人間以外のものたちと、少しだけ通じ合えるというのは、それほどめずらしいことではないらしい。 サトシ自身も、庭木戸が語りかけてくることばがわかる。だか…