かきがら掌編帖

数分で読み切れる和風ファンタジー*と、読書・心理・生活雑記のブログです。

2017-09-01から1ヶ月間の記事一覧

虹の花(創作掌編)

つぐみ町郵便局は、にぎやかな商店街のなかほどにあります。少しレトロな建物と、大きな赤いポストが、町の人たちに親しまれていました。 秋冷えの朝、郵便局が開くと同時に飛びこんできたのは、漆黒のドレスを着た女の人でした。郵便の窓口を担当しているナ…

第4の可能性が……

ほんとうにどうでもいい話なのですが、この15日間、気がかりになっていることがあるので、書きとめておきたくなりました。 クモの話です。 先々週の月曜日の朝、出勤前に洗濯をしてベランダに干し、網戸と窓とカーテンを閉めました。ふと見ると(気配を感…

コスモス色の風(創作掌編)

シロは峻介が生まれるより先に、家にやってきた。シロにだって子犬のころはあったに違いないけれど、記憶に残っているのは、いつも遊び相手になってくれた、優しい姉のようなシロだけだ。 シロには不思議な力があった。 忘れ物をしたまま学校へ行こうとする…

イソップの太陽(創作掌編)

30年も前のことだけれど、ありありと覚えている。 古びたオフィスビルが立ち並ぶ街角、道路をはさんで向かいあっている2棟のビル。共に7階建てで、片方が灰色、もう片方は煉瓦色だった。 私が数ヶ月のあいだ夜間の警備員をしていたのは、灰色のビルのほ…

テレビ離れと情報の最適化

しばらく前までは、在宅時にテレビ(地上波)が点いているのが、普通の状態でした。 BGM代わり、時計代わり、見ていてもいなくても、テレビが点いていないと物足りない。家に帰るとまず、テレビをONにしていました。 ところがいつからか、一方的に流れ込んで…

りんどう坂(創作掌編)

祖父が、青紫色の花束を持って、目の前を通りすぎていく。 「おじいちゃん!」 奏多は思わず、高い声で呼びかけた。 「おお、奏ちゃん。もう学校は終わったのか。今から病院かい?」 「うん」 奏多の母親は先週から入院している。 仕事大好き人間の母は、夏…

「麴のちから!」~今は塩麹が私の必須食材です~

数年前ブームになっていましたが、私が塩麹を使い始めたのはここ半年くらいです。原材料が米麹と塩だけのものは、なかなかお店に置かれていないので、ネットで購入したりしています。 「麴のちから!」 山元 正博 著 100年、3代続いた麴屋に生まれ、頭の…

結晶 (創作掌編)

正美にとって最大の悩みの種は、長年続いている肩こりだった。 まるでゴツゴツした石が、両肩に埋めこまれているようだ。ただこっているだけはなく、ちょっとしたはずみで、首から肩にかけてつってしまうと、寝違えたように痛む。自分の頭の重さを支えきれず…

「一汁一菜でよいという提案」~図書館へ返す前に抜き書きしたくなる本~

図書館にリクエストしたら、すでに予約している人がたくさんいて、順番がまわってくるまで5ヶ月以上かかりました。 「一汁一菜でよいという提案」 土井 善晴 著 一汁一菜とは、ただの「和食献立のすすめ」ではありません。一汁一菜という「システム」であり…