かきがら掌編帖

数分で読み切れる和風ファンタジー*と、読書・心理・生活雑記のブログです。

2018-02-01から1ヶ月間の記事一覧

ゲシュタルト療法「誕生のワーク」

私は出産予定日を過ぎて生まれた過期産児でした。 「明日、陣痛促進剤を使いましょう」と医師に言われたその日、夜になってから自然に陣痛が始まったそうです。 真夜中だったにもかかわらず、運よく医療スタッフは充実していて、逆子のため難しいお産ではあ…

クマ画伯(創作掌編)

クマ画伯のことは、何年か前まで、テレビでよく見かけた。 その素朴派の画風よりも、特異な経歴のほうに関心が集まっていたことを覚えている。 仔グマのときから画家をこころざし、絵を学びたい一心で、単身ふるさとの山を下りた。薪割りのアルバイトをしな…

音楽隊の音楽会

私が読者登録をさせていただいている「かぴたん」さん は、海上自衛隊東京音楽隊の歌姫、三宅由佳莉さんの大ファンです。 私は、かぴたんさんのブログで、初めて三宅さんのことを知ったのですが、記事を読み、紹介された動画を観るうちに、ぜひライブに行き…

アマノ荘の神さま(創作掌編)

満開の桜の下で、宴を開いている人たちの声がする。 木造2階建てアパートの敷地だった。板塀のすき間から、なごやかな雰囲気が伝わってくる。 「おめでとう」 「おめでとう」 祝福の声が、通りがかった美弥の耳にも届いた。 ゆっくりと歩き続けながら、美弥…

母と音楽

近々、演奏会へ行く予定なので、事前に発表されている楽曲を聴いて予習しています。 こういうとき、YouTubeはほんとうにありがたいですね。 予習曲のひとつ、バーンスタインの「シンフォニック・ダンス」(『ウエスト・サイド・ストーリー』より)を、母の好…

薬草園の匂い袋(創作掌編)

礼美のお祖母さんは、薬草園を営んでいる。 昔は薬草だけを育て、煎じ薬や軟膏にして売っていた。土地の人たちは、どこか体の具合が悪いと、まず薬草園にやってきたそうだ。 時代の流れと共に、扱うのは薬草よりハーブが多くなって、今では「薬草園」といっ…

ゲシュタルト療法 基本のキ「気づき」

ここ2年ほど学習中のゲシュタルト療法(「今、ここ」での気づきを重視する実践的な心理療法)において、大切な「気づき(awareness)」ですが、それがどういうものなのか、実はまだわかりません。 わかるのを待っていたら、いつまでたっても書けそうにない…

ぼくの鬼(創作掌編)

一郎にとって、冬は風邪の季節だ。 治ったかと思うとぶり返したり、次の風邪にかかったりするから、学校へ行くより家で寝こんでいる日のほうが多くなった。 一郎の風邪予防のため、毎年、春から秋までのあいだ、家族全員で取り組んでいた。 お父さんは、体質…