かきがら掌編帖

数分で読み切れる和風ファンタジー*と、読書・心理・生活雑記のブログです。

2019-04-01から1ヶ月間の記事一覧

アゲハ(創作掌編)

私たちアゲハの体のなかには、「らせんの教科書」というものが備わっていて、いつ何をどうすればいいか、自然にわかるようになっている。 卵に穴を空けて外に出るタイミングも、ひと休みしてから卵の殻を食べることも、その都度「らせんの教科書」に教わった…

ちょっと錯視

トイレの掃除をしていて、「あれっ」と思いました。 残り少なくなったトイレットペーパーをホルダーからはずし、新品のとなりに並べて置いたら、明らかに芯のサイズが違う……。 一瞬、お値段すえおきで容量を減らす実質的な値上げかな?と考えましたが、それ…

オリヴァー・サックス著『火星の人類学者』の勇気

『火星の人類学者』(早川書房)は、脳神経科医であり作家でもあったオリヴァー・サックスの「医学エッセイ」です。 火星の人類学者―脳神経科医と7人の奇妙な患者 (ハヤカワ文庫NF) 作者: オリヴァーサックス,Oliver Sacks,吉田利子 出版社/メーカー: 早川書…

ヒーローの任命式(創作掌編)

和弘にとって美里市民会館は、歴史的建造物と呼びたいくらい特別だ。 祖父も、父も、ここで結婚式を挙げた。 そして今日、市民会館の大ホールで、忘れかけていた子供の頃の夢が叶い、和弘はヒーローに任命されるのだ。 『ミサト・ガーディアン』は、50年近…