かきがら掌編帖

数分で読み切れる和風ファンタジー*と、読書・心理・生活雑記のブログです。

2017-06-01から1ヶ月間の記事一覧

落とし穴(創作掌編)

真夜中に、ふと目がさめた。 (何か、音がしたかな) 耳をすますと、庭の方から話し声が聞こえてくる。針が落ちる音のような、小さな声だ。 「――それから、ミドリ町のミドリ公園では、二日前に殺虫剤が散布されました。皆さん、しばらくのあいだ注意して下さ…

カタツムリの夢(創作掌編)

一晩中、降りつづいた雨があがりました。 紫陽花の葉かげで眠っていたカタツムリは、目をさまして、のんびりと動きはじめます。くもり空と、しめった空気が、気もちのいい朝でした。 丸いかたちに寄りあつまって咲く紫陽花が見えてきました。 「また、青くな…

16番の下足箱(創作掌編)

天に向かってまっすぐ伸びた煙突を目当てに、圭太は道をさがしていた。 社会人になってから3年半、いよいよ会社を辞める決心をして、ワンルームのマンションからユニットバスもついていないアパートに引っ越してきたばかりだ。 近所に銭湯があるのはわかっ…