かきがら掌編帖

数分で読み切れる和風ファンタジー*と、読書・心理・生活雑記のブログです。

新作帖

さかな顔の姫君(創作掌編)

※ 先日、『雷理さん』の記事を拝読し、ブクマコメントのやりとりから生まれた掌編です。www.rairi.xyz 静かな水底で、ヒメマスとキングサーモン(和名:マスノスケ)が、朝のあいさつを交わしていました。 「おはよう、ぼくの姫君。いい夢を見たかい?」 「…

おみやげ(創作掌編)~最初で最後の弟子⑤~

MNJの自然災害対策行動に初参加して1ヶ月あまり、ようやく帰ってきた銀ひげ師匠の様子は変わりはてていた。 ひげは伸び放題でボサボサ、顔も手も日に焼けて、小さな傷や虫刺されの跡がいくつも見える。 (こんなんで明日からの書道教室、だいじょうぶだろう…

ソウルメイト~ハヤさんの昔語り〔第二幕〕③~(創作掌編)

家で仕事をするのは好きだけれど、まったく外へ出なかった日は、もの足りない気持ちになる。 そう言うと、ハヤさんが意味ありげにうなずいて答えた。 「閉じ込められた魂は、自由を求めるものです。『憧れる』のもとになった古語『あくがる』には、魂が体か…

フライング・ブーケ(創作掌編)

僕の大好きな人、みのりさんが、チャリティコンサートの招待券をくれた。 みのりさんは、主催者側のスタッフなので、一緒に客席に座れるわけではないけれど、コンサート終了後に、夕食の約束をとりつけることができた。 クラシックのコンサートだ。曲目は、…

いつか…(創作掌編)~最初で最後の弟子④~

toikimi.hateblo.jp 銀ひげ師匠が『魔法使いネットワーク・ジャパン(MNJ)』の自然災害対策行動に参加しているあいだ、晶太は影武者たちと一緒に留守番していた。 「灰一」と「紺二」は、師匠が影武者の魔法をかけた作務衣で、洗濯のため2日ごとに交替する…

月見ヶ池~ハヤさんの昔語り〔第二幕〕➁~(創作掌編)

在宅の仕事でアイデアに詰まり、気分転換を兼ねて散歩に出た。 「いい月夜ですね」 といって、ハヤさんもついてくる。 中天にかかる月は明るく、私は額のあたりに、ひんやりと澄んだ光を感じながら歩いた。 「なんとなく、頭が冴えてきたような気がする」 「…

断片をたどって(創作掌編)

さっきまで騒がしさが嘘のように、静かになった。 私は、 ほっとして歩きつづける。不思議なくらい身も心も軽く、気分は上々だ。 このところ、何かと大変だったけれど、済んでしまえばどうということもない。結局また、取り越し苦労だっだのだろう。 今はた…

影武者(創作掌編)~最初で最後の弟子③~

【連作掌編の第3話です】 toikimi.hateblo.jp 銀ひげ師匠のところに、初めて、『魔法使いネットワーク・ジャパン(MNJ)』から、自然災害対策行動のお知らせが来た。 群れることを好まない魔法使いたちも、たまに集うのは歓迎するみたいだ。 師匠は感無量で…

仲直りの怪談~ハヤさんの昔語り〔第二幕〕~(創作掌編)

私は、慎重に準備を整えてから行動に移す性格だが、ハヤさんと暮らし始めたときは、全く違っていた。 必要最小限の日数で、追い立てられるように珈琲店の2階へ引っ越してきたのだ。 新婚家庭的な要素は皆無、奇妙な共同生活の開幕である。 いくら宿命の相手…

自由研究(創作掌編)~最初で最後の弟子②~

【前回の掌編の続きです】 toikimi.hateblo.jp 晶太が銀ひげ師匠の弟子になり、魔法の修行を始めてから半年経った。 師匠の営む書道教室に通いつめ、基本の魔法「見えずの墨」を会得したときのことは忘れられない。 一意専心で磨り終えた墨に向かい、口伝え…

最初で最後の弟子(創作掌編)

晶太が通い始めた書道教室は、墨汁と筆ペンを使わない方針のせいか、あまり流行っていなかった。 学童クラスはさっぱりだが、成人クラスの継続的な「生徒さん」たちのおかげで成り立っているのだ、と師匠は言っている。 祝儀袋や不祝儀袋に書く名前くらいは…

山里町の恵み(創作掌編)

陽一は営業部長のお供として、クライアントと会食することになった。 本来なら、研究開発チームのリーダーが行くはずだったのに、突然のぎっくり腰で、若手にお鉢が回ってきたのだ。 連れて行かれたのは、本格的な日本料理の店で、道路から入り口までの間が…

クマ画伯(創作掌編)

クマ画伯のことは、何年か前まで、テレビでよく見かけた。 その素朴派の画風よりも、特異な経歴のほうに関心が集まっていたことを覚えている。 仔グマのときから画家をこころざし、絵を学びたい一心で、単身ふるさとの山を下りた。薪割りのアルバイトをしな…

黒い発明家と白い発明家(創作掌編)

日本発明家コンベンション、通称NHCは、世界的に名の知れた日本人発明家の遺産により運営されている財団法人で、個人発明家を支援することを目的としていた。 「第21回NHC大会の優勝者は、静電気蓄電ブレスレットを発明した『白馬』さんに決定いたし…

酔っぱらう芙蓉(創作掌編)

上弦君とは、知人の仕事仲間という縁で知り合った。友だちというよりは、一方的になつかれて、相談相手になっているという間柄だ。 今日も、「ナミさんの意見を聞かせてもらいたくて」と連絡があり、ビオ居酒屋で待ち合わせた。花の品種改良の仕事をしている…

イソップの太陽(創作掌編)

30年も前のことだけれど、ありありと覚えている。 古びたオフィスビルが立ち並ぶ街角、道路をはさんで向かいあっている2棟のビル。共に7階建てで、片方が灰色、もう片方は煉瓦色だった。 私が数ヶ月のあいだ夜間の警備員をしていたのは、灰色のビルのほ…