かきがら掌編帖

数分で読み切れる和風ファンタジー*と、読書・心理・生活雑記のブログです。

ちょっと錯視

トイレの掃除をしていて、「あれっ」と思いました。 残り少なくなったトイレットペーパーをホルダーからはずし、新品のとなりに並べて置いたら、明らかに芯のサイズが違う……。 一瞬、お値段すえおきで容量を減らす実質的な値上げかな?と考えましたが、それ…

オリヴァー・サックス著『火星の人類学者』の勇気

『火星の人類学者』(早川書房)は、脳神経科医であり作家でもあったオリヴァー・サックスの「医学エッセイ」です。 火星の人類学者―脳神経科医と7人の奇妙な患者 (ハヤカワ文庫NF) 作者: オリヴァーサックス,Oliver Sacks,吉田利子 出版社/メーカー: 早川書…

ヒーローの任命式(創作掌編)

和弘にとって美里市民会館は、歴史的建造物と呼びたいくらい特別だ。 祖父も、父も、ここで結婚式を挙げた。 そして今日、市民会館の大ホールで、忘れかけていた子供の頃の夢が叶い、和弘はヒーローに任命されるのだ。 『ミサト・ガーディアン』は、50年近…

マスカレード(創作掌編)

僕は無個性な社会人だが、仮面の制作という少し変わった趣味を持っている。 「ベネチアンマスク」と呼ばれる、中世ヨーロッパの仮面舞踏会やカーニバルで使われていた、顔の上半分を覆うハーフマスクを作るのが好きなのだ。 あるとき、完成した作品を並べて…

ダーウィンとミミズ

ダーウィン(1809年~1882年)は22歳のとき、イギリス海軍の測量船ビーグル号に乗船し、世界一周をしました。5年にわたる航海中に行った自然観察と調査、標本の採集から、生物は進化するという説「進化論」が生まれたのです。 帰国後は原因不明の体調不良に…

ミミズの凱旋(掌編創作)~最初で最後の弟子⑧~

魔法使いの銀ひげ師匠は、書道教室の先生でもあるので、 ときには、額装や掛け軸にするための「書」も頼まれる。 4年前の書道作品を持って訪ねてきたのは、真新しいスーツ姿の、小網さんという人で、お祖母さんからの贈り物だったそうだ。 挨拶が済み、小網…

金魚の想い(創作掌編)

「コイじゃないのか?」 「違います、コイじゃありません」 昼休憩から戻ってきた男性社員2人が、声高にしゃべっている。となりの部署の課長と、その部下の江戸川さんだ。 (恋?) 優海は思わず、耳をそばだてた。 「でも、あの大きさはどう見てもコイ、紅…

ウチガミさま~ハヤさんの昔語り〔第二幕〕⑤~(創作掌編)

ハヤさんの珈琲店では、2月限定のホットチョコレートが、隠れた人気メニューになっている。 「ちょっとした贅沢を味わえる」 と、普段はブラックコーヒー派のお得意様に大好評なのだ。 ホットチョコレートは、駅前の洋菓子店でパティシエをしている妹さんか…

オリジナルマジック(創作掌編)

クロースアップマジックと出合ったことは、人生最大の驚きと喜びだった。 至近距離で繰り広げられる、カードやコイン、ロープ、リングのテーブルマジックに魅了され、そのマジシャンがオーナーをしているマジックショップに通いつめたものだ。 そして、幸運…

蔵(創作掌編)~最初で最後の弟子⑦~

晶太がいつものように、銀ひげ師匠の書道教室へ行くと、ちょうどお客さんが帰るところだった。 このあいだスケアクロウのことで相談にのった、ゆなちゃんのお祖母さんが、若い女の人を連れている。ゆなちゃんと仲良しのつぐみちゃんのお母さんで、容子さんと…

「あなたは敗れたのです」(創作掌編)

サトシは中学時代からの友だちだが、正月も仕事で帰って来ないというので、こちらから会いに行くことにした。 シングルパックの切り餅をいくつかと、家にあった金箔入り吟醸酒をリュックに詰め、さほど遠くはないものの、一度も訪れたことがない町へ向かう。…

『やすらぎの里』でリトリートしてきました。

伊豆高原にある『やすらぎの里(本館)』は、断食や食養生で心と体をリセットする、滞在型のリトリート施設です。 数年前に、ゲシュタルト療法のファシリテーターの方から教えてもらい、いつか行ってみたい思っていましたが、その「いつか」が来て、行ってき…

奇跡の一日(創作掌編)

僕は昼前に会社を早退した。毎年恒例のことなので、誰も気にしないし、何も言われない。 午前中に予約しておいた花屋で花束を受け取り、駅へ向かった。 霊園までは、電車を乗り継いで1時間半かかる。緑が豊かで広々とした、公園のような場所だ。 明るい陽光…

山桜を育てるミニ盆栽~種まき~

昨年10月28日、種から山桜を育てる栽培セットの「種まき前の下準備」として、種に冬を疑似体験させるため、冷蔵庫へ入れました。 toikimi.hateblo.jp 説明書によれば、冷蔵庫での低温期間は1~3ヶ月。 新しい年も始まりましたし、種まきをすることにしま…

天狗の下駄~ハヤさんの昔語り〔第二幕〕④~(創作掌編)

仕事の打ち合わせから戻り、珈琲店のドアを開けると、ハヤさんが「いらっしゃいませ」ではなく、「おかえりなさい」と言った。 ちょうどお客が途切れたタイミングだったようだ。 なんとなく嬉しい気分でカウンターへ向かう途中、ふと、見慣れない物が目に留…

ゲシュタルト療法~変化の逆説~

ゲシュタルト療法のワークで時折、「変化の逆説」という言葉を耳にしました。 簡単に述べると、「人は、自分でない者になろうとする時ではなく、ありのままの自分になる時に変容が起こる」ということである。つまり、変容は自分あるいは他者がその人を変えよ…

スケアクロウ(創作掌編)~最初で最後の弟子⑥~

銀ひげ師匠の書道教室で最年少のゆなちゃんから、相談事があった。 「話を聞いたかぎりでは、どうも魔法がらみに思える。それより気になるのが、なぜ私に、この手の相談を持ちかけてきたか、ということなんだが……」 「ひょっとして、師匠の正体を見抜いたと…

『骨盤にきく』~「身がまま」に生きる知恵~

新刊コーナーに並べられていた本の、表紙の絵と文字に引かれて手に取ったことをよく覚えています。 骨盤にきく―気持ちよく眠り、集中力を高める整体入門 (文春文庫) 作者: 片山洋次郎 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2009/04/10 メディア: 文庫 購入: 10…

迷走の夜(創作掌編)

酔っぱらいの帰巣本能にはいつも驚かされる。 気がつくと私は、自宅最寄り駅のホームに立っていた。吹きぬける風の冷たさで、我に返ったようだ。 自動販売機で温かいお茶を買い、 (もう2度と、やけ酒は飲まないぞ)と、心に誓いながら家路をたどる。 夜更…

『植物はそこまで知っている』~ウチノキについて~

20年前のこと。当時働いていたオフィスで、園芸好きの社員が空き瓶を利用した水栽培を始めました。 社内に置いてある観葉植物の、伸びた茎や小枝をカットして、水につけておくと根が生えてきます。 「いずれ持ち帰って、鉢に植え替える」と言っていたので…

春を告げる焚き火(創作掌編)

ある資源フォーラムにおいて、大変ユニークな発表があった。 テーマは「焚き火と燃料費の相関研究」である。 調査対象となった「A地域」は、定住者の多い郊外の地区で、落葉樹が多く植わっており、晩秋から初冬にかけて焚き火(落ち葉焚き)が盛んに行われて…

トイレの夢パターンの話

今日、昼休みに職場の同僚と喋っていて、 『就寝中、トイレに行きたくなったとき、見る夢のパターン』 についての話で盛り上がり、おもしろかったので書き留めておきたい。 敬体ではなく常体で書きたい内容である。 話し相手の彼女のパターンは、とにかく「…

『クリミナル・マインド』の格言(補足)日本のことわざ

以前、海外ドラマ『クリミナル・マインド FBI行動分析課』の、始まりや終わりのシーンで引用される格言について記事を書いたのですが──、 toikimi.hateblo.jp ➃英訳→再和訳で原形がわからなくなった気がすることわざ。 シーズン8 第6話「殺しの教室」独学で…

種から山桜を育てる『ミニ盆栽』

『かえるさんの星占いらぼらとりー』というブログで、日々、ヒントとギフトをいだたいていますが、このあいだ、趣味に関してのキーワード、 “植物等を「育てる」、チェックをする” を見たとき、あることを思い出しました。 www.kaerusan01.com 一昨年、友人…

「カラス語」の研究

ずいぶん前のことですが、カラスのことばを聞き分ける女性を主人公に、掌編を書きました。toikimi.hateblo.jp 先日、朝の時間にラジオを流していたら、旬の話題のコーナーで「カラス語」の研究者について取りあげていたので、引き込まれて傾聴しました。 「…

魔法ラベル(創作掌編)

ハロウィンの仮装パーティに招かれた佳奈は、衣装を買いに出かけた。 店内をひととおり見て回り、魔女になろうと決める。帽子とマントのセットを選んで、レジへ向かう途中、パーティグッズのコーナーで足が止まった。 『魔法ラベル』というのが気になる。 他…

「いろは歌」いろいろ

アルファベット26文字をすべて使って、意味のある短文にしたものをパングラム(pangram)と呼ぶそうですが、「いろは歌」は、美しい語句と深い意味とを兼ね備えた、ひらがな版パングラムの最高峰といえます。 色はにほへど 散りぬるを 我が世たれぞ 常ならむ…

さかな顔の姫君(創作掌編)

※ 先日、『雷理さん』の記事を拝読し、ブクマコメントのやりとりから生まれた掌編です。www.rairi.xyz 静かな水底で、ヒメマスとキングサーモン(和名:マスノスケ)が、朝のあいさつを交わしていました。 「おはよう、ぼくの姫君。いい夢を見たかい?」 「…

田房永子さん『呪詛抜きダイエット』のゲシュタルト療法

ゲシュタルト療法のプレトレーニング期間中は、ずっと単発のワークショップに参加していたので、「ゲシュタルトのワークショップは初めて」という方と、ご一緒する機会が何度かありました。 そのなかのひとりから、田房永子さんのコミックエッセイを読んで、…

おみやげ(創作掌編)~最初で最後の弟子⑤~

MNJの自然災害対策行動に初参加して1ヶ月あまり、ようやく帰ってきた銀ひげ師匠の様子は変わりはてていた。 ひげは伸び放題でボサボサ、顔も手も日に焼けて、小さな傷や虫刺されの跡がいくつも見える。 (こんなんで明日からの書道教室、だいじょうぶだろう…