かきがら掌編帖

数分で読み切れる和風ファンタジー*と、読書・心理・生活雑記のブログです。

2017-01-01から1年間の記事一覧

テレビ離れと情報の最適化

しばらく前までは、在宅時にテレビ(地上波)が点いているのが、普通の状態でした。 BGM代わり、時計代わり、見ていてもいなくても、テレビが点いていないと物足りない。家に帰るとまず、テレビをONにしていました。 ところがいつからか、一方的に流れ込んで…

りんどう坂(創作掌編)

祖父が、青紫色の花束を持って、目の前を通りすぎていく。 「おじいちゃん!」 奏多は思わず、高い声で呼びかけた。 「おお、奏ちゃん。もう学校は終わったのか。今から病院かい?」 「うん」 奏多の母親は先週から入院している。 仕事大好き人間の母は、夏…

「麴のちから!」~今は塩麹が私の必須食材です~

数年前ブームになっていましたが、私が塩麹を使い始めたのはここ半年くらいです。原材料が米麹と塩だけのものは、なかなかお店に置かれていないので、ネットで購入したりしています。 「麴のちから!」 山元 正博 著 100年、3代続いた麴屋に生まれ、頭の…

結晶 (創作掌編)

正美にとって最大の悩みの種は、長年続いている肩こりだった。 まるでゴツゴツした石が、両肩に埋めこまれているようだ。ただこっているだけはなく、ちょっとしたはずみで、首から肩にかけてつってしまうと、寝違えたように痛む。自分の頭の重さを支えきれず…

「一汁一菜でよいという提案」~図書館へ返す前に抜き書きしたくなる本~

図書館にリクエストしたら、すでに予約している人がたくさんいて、順番がまわってくるまで5ヶ月以上かかりました。 「一汁一菜でよいという提案」 土井 善晴 著 一汁一菜とは、ただの「和食献立のすすめ」ではありません。一汁一菜という「システム」であり…

夾竹桃の庭(創作掌編)

さよ伯母さんは、6月の千恵の誕生日に、いつもプレゼントを贈ってくれる。 お正月やお彼岸に会ったとき、2人で話したことをよく覚えていて、ちゃんと千恵のよろこぶものを選んでくれるのだ。 今年届いたのは、アクセサリービーズのキットだった。宝石箱の…

ミニ間リスト

ミニマリストさんの記事を読むのが好きです。 あの境地まではとうてい行き着けないけれど、もっと物を減らしたいとは思っていて、自分なりに実行してきました。 最近では、存在することを忘れていた物(あ、こんなのとっておいたんだ、みたいな)を発見した…

闇夜のカラス会議(創作掌編)

寝入りばな、美里はカラスの声で目をさました。 近くにある公園には木が生い茂っていて、カラスが巣を作っている。朝晩、呼び交わすように鳴く声は、普段から聞きなれていた。 (こんな夜遅くにめずらしい。カラスって鳥目じゃないの?) 不思議に思って耳を…

カバンが重い

今週のお題「カバンの中身」 毎日持ち歩いているショルダーバッグが重い。 勤め先の近くに引っ越して、「電車通勤中に読むための本」が荷物から減ったけれど、そのわりに軽くはならなかった。 中身を確認してみると、以前に整理したこともあって、特に意外な…

ゲンコツ花火(創作掌編)

雪矢は子どものころから、走ることが好きだった。 飛びぬけて速かったわけではないけれど、同じ速度でどこまでも走り続けることができた。だから、距離の決まっていないかけっこでは、いつも一番だった。 実業団の長距離選手となった現在まで、ずっと走り通…

ほおずきの灯り(創作掌編)

日が暮れるのを待って、和奈は新盆の白い提灯に火をともした。 窓辺に提灯をつるしてから、母に声をかける。 「次は、迎え火だね?」 母は小さくうなずいたけれど、立ちあがろうとはしなかった。 和奈はひとりでベランダに出ると、用意しておいた迎え火をた…

林間学校(創作掌編)

林間学校の第1日目、真志は初めて、本物のカッコウの鳴き声を聞いた。 (ほんとに「カッコウ、カッコウ」って鳴くんだなぁ) と、感心する。 夕食後、先生のお話や注意事項を聞くために集合したレクリエーションルームでは、正面の目立つ場所に、大きな額が…

まるごとスイカの夏(創作掌編)

電車を降りたとき、向かい側のホームに、カコとみーこの姿が見えた。 急いで階段をかけおり、ちょうど改札のところで追いつく。 「ぶーちゃんはバイトで遅くなるって」 私の報告に、ふたりはそろってうなずいた。 「じゃ、先に行ってようか」 手土産のケーキ…

砂のウサギ(創作掌編)

千早さんのところに、なつかしい人が訪ねてきた。20年ほど前、マンションの同じ階に住んでいた牧野家の長男、マコト君だ。 彼の母親が病気で長期入院することになったとき、千早さんは隣人として、子守役を買って出た。人見知りだったマコト君が心を開いて…

そよ風に乗って(創作掌編)

夏風邪が長びいたせいで、礼美はもう5日も学校を休んでいます。 最初の2日間は、お母さんがつきっきりで看病してくれたし、おととい、昨日はバトンタッチしたお祖母ちゃんに甘やかされて、小さな子どもに戻った気分でした。 けれど今日は、朝からひとりで…

落とし穴(創作掌編)

真夜中に、ふと目がさめた。 (何か、音がしたかな) 耳をすますと、庭の方から話し声が聞こえてくる。針が落ちる音のような、小さな声だ。 「――それから、ミドリ町のミドリ公園では、二日前に殺虫剤が散布されました。皆さん、しばらくのあいだ注意して下さ…

カタツムリの夢(創作掌編)

一晩中、降りつづいた雨があがりました。 紫陽花の葉かげで眠っていたカタツムリは、目をさまして、のんびりと動きはじめます。くもり空と、しめった空気が、気もちのいい朝でした。 丸いかたちに寄りあつまって咲く紫陽花が見えてきました。 「また、青くな…

16番の下足箱(創作掌編)

天に向かってまっすぐ伸びた煙突を目当てに、圭太は道をさがしていた。 社会人になってから3年半、いよいよ会社を辞める決心をして、ワンルームのマンションからユニットバスもついていないアパートに引っ越してきたばかりだ。 近所に銭湯があるのはわかっ…