かきがら掌編帖

数分で読み切れる和風ファンタジー*と、読書・心理・生活雑記のブログです。

リスナー超初心者の心得

 

フォーカシングは、アメリカの哲学者・臨床心理学者ユージン・ジェンドリンが創始した心理療法です。

自分の状況や気がかりな事柄に対して感じている、まだ言葉にならない「からだの感じ(フェルトセンス)」にフォーカスし、それを言語化やイメージ化することで、行き詰った状態から自分を解放していく、というプロセスのワークを行います。

 

フォーカシングはひとりでもできますし、フォーカサー(フォーカシングをする人)とリスナー(聴き役)とのやりとりで行うこともできます。

また、フォーカサーとリスナーが対等に役割を交代するパートナーシップというものがあるのも、フォーカシングのおもしろいところです。

 

私は今年の3月から月1回くらいの頻度で、フォーカシングのオンラインワークショップにフォーカサーとして参加し、そろそろリスナーもやってみたくなってきたので、本を読んで「予習」しました。

 

やさしいフォーカシング――自分でできるこころの処方』
アン・ワイザー・コーネル[著]/大澤美枝子・日笠摩子[共訳]
コスモス・ライブラリー(1999/9)

 

著者のアン・ワイザー・コーネルさんによれば、

「リスナーになる場合、何よりもまず、あなたが自然のままでそこにいることが大切です」

とのこと。

フォーカサーに何かしてあげようとか、「よい」セッションをしてもらおうなどという思いは捨てます。相手を尊重する態度をとり、意識を静かな水面のように保って、ただそこにいることが、リスナーの仕事なのです。

 

──と、ここまでは心構えですが、具体的には何をどうすればいいのでしょうか。

まずは、以下の2点が重要です。

  1. 考えたり分析したり評価したり、何を次に答えようかと思案したりしないで、ただ聴く。
  2. 相手に聴いているということが伝わり、フォーカシングのプロセスを進めるために利用できるよう、伝え返しをする。

この「伝え返し」とは、

フォーカサー:「悲しい気がする」→ リスナー:「悲しいんですね」

「喉のところに固さを感じます」→ 「喉のそこのところに固さがあるんですね」

というように、フォーカサーが聞き直す必要のある言葉や感じを、リスナーが繰り返して伝えることです。

 

しかし、フォーカサーはいろいろなことを話しますから、リスナー超初心者としては、何を聴き、何を伝え返すかというポイントを押さえておきたいところです。

こちらは、3点に絞られていました。

  1. 感じや感情
  2. 最後に言ったこと:フォーカサーがずいぶんたくさんしゃべった後で、ようやく伝え返しの間ができた時、全部を覚えている必要はない。相手が最後に言ったことを伝え返すと、たいていの場合いちばん有効。

  3. 二度出てきたことは何でも:相手が何かを繰り返して言ったら、その言葉をリスナーに伝え返してもらいたいというサイン。同じ表現が二度出てきたら何でも伝え返す。

 

予習用のテキスト、もう1冊。

フォーカシングで身につけるカウンセリングの基本――クライエント中心療法を本当に役立てるために』
近田輝行[著] コスモス・ライブラリー (2002/11)

 

「初心者のリスナーは、はじめは傾聴と大事なことばの伝え返しに徹します」

著者の近田輝行さんがリスナーの心得として挙げておられるは、アン・ワイザー・コーネルさんと同じく、①傾聴②伝え返しの2つです。

 

 

リスナーはまず、自分のからだをじっくり感じ、からだ全体でしっかりそこにいるようにします。

そして、フォーカサーのからだの動きや、目元、口元などの微妙な表情に注意しながら、自分なりのやり方で波長を合わせ、相手が話すことを自分の中に取り入れるように聴くこと。

 

伝え返しの大切さについては、以下のように説明されています。

 よいリスナーを得てフォーカシングを体験すると、いかに伝え返しが大切かを理解することができます。

 伝え返しは、話し手が自分の内側のものを認めたり、共鳴したり、それといっしょに居ることを助けます。

 

具体的なポイントとしては──、

  • 大事な言葉、フェルトセンスに触れる言葉はそのまま伝え返す。

  • 説明や前置きのような部分も、要約してある程度伝え返す。その際、伝え返しがくどくなったり長くなったりしないように注意する。

  • フォーカサーがたくさん話した場合は、気持ちの部分だけを返す。

  • 言ったことの一部しか覚えていない場合は、覚えている部分だけを伝え返す。

  • 質問したり、質問の口調にならないように気をつける。(フォーカサーがリスナーの質問に答えなければならないと感じてしまうと邪魔になるため)

 

 

さて、今月もオンラインワークショップに参加しました。

人数やメンバーは毎回変わるのですが、今回はちょうどいい成り行きで、フォーカサーとリスナーを交代で行うフォーカシング・パートナーシップを体験することができました。

相手の方はフォーカシングの認定トレーナーなので、いわばエキスパートです。これまで何度かセッションしてもらっており、すでに信頼関係を築けています。最高のパートナーに恵まれ、ほんとうにラッキーでした。

 

リスナー超初心者の私は、フォーカサーが最後に言ったこと、あるいは自分が覚えている部分を伝え返すだけでいっぱいいっぱい。普段は使わない脳の筋肉をたくさん使ったせいで、頭の中が汗だく状態でしたが、とても楽しかったです。

不思議なことに、お互い違うテーマでフォーカシングをしたのに、どこか通じ合う流れを感じました。

そして、ワークが終了した後、かなり「ハイ」な感じになりました(笑)。これがクセになるのかもしれません。

機会があれば、ぜひまたリスナーをしてみたいです。