数年前ブームになっていましたが、私が塩麹を使い始めたのはここ半年くらいです。原材料が米麹と塩だけのものは、なかなかお店に置かれていないので、ネットで購入したりしています。
「麴のちから!」 山元 正博 著
100年、3代続いた麴屋に生まれ、頭のてっぺんからつま先まで麴まみれで育ち、麴とともに生きているという著者の、「麴愛」に満ちあふれた本です。
「塩麴の一夜漬け」
大根、白菜、キャベツ、きゅうりなどをよく洗い、水を切ってから、目分量でその10分の1ほどの量の塩麴と合わせてよく揉みます。そのまま、ジッパー付きの袋に入れ、空気を抜いてジッパーを閉めてください。なるべく真空状態にしておいたほうが、塩分の浸み込みが速くなります。あとは冷蔵庫でひと晩寝かせるだけ。
なぜ塩麴を使うと、速く簡単に美味しい漬け物ができるのかというと、理由はふたつ。
ひとつは、塩麴の出す酵素が野菜の繊維質や糖質、でんぷん質を分解してうま味に変えるから。もうひとつは、麴が漬け物に必要な乳酸菌の増殖スピードを3倍にも増やすからです。
農学博士の説明なので説得力を感じます。
一方では、奥様が塩麴を入れてご飯を炊いている(お米3合に塩麴大さじ1杯)と、
「そんなもの、ボイルすると酵素が破壊されるだけだから、味が変わるはずがないだろう」なんて女房に理屈を言っていました。
ところが、大さじ1杯の塩麴の威力は絶大でした。実行していた女房のほうが正しかったのです。ふだん麴博士といわれる私も形無しでした。
――という、くすっと笑ってしまうエピソードもあって楽しいのです。
この本を読んで、麹菌は食べ物を美味しくするだけではなく、心身の健康から環境の浄化にまで効果を発揮する、秘められた大きな力があることを知りました。
「麴菌は愛の微生物」
麴菌は他の微生物と共生するのです。他者を攻撃しないやさしい微生物なのです。
抗生物質のように他者を殺すような物質は出さず、むしろ自分自身を提供して、周りの有用微生物を強化してくれます。
だから私は主張したいのです。
麴は愛の微生物だと。
和をもって尊しとなす日本人。
まさに日本人を代表するような菌。それが麴菌です。
麴屋3代目の私がやるべきこと、それは麴菌の無限の可能性をもっともっと引き出し、世の役に立てることだと考えています。
食品用ポリ袋に、切ったきゅうりとミョウガ、適量の塩麹を入れて、シャカシャカ振り混ぜます。塩麹が行きわたったらポリ袋の空気を抜いてしばり、冷蔵庫にしばらく入れておけば出来上がりです。私は食べる直前にマヨネーズをかけています。チリメンジャコなどをトッピングしてもおいしい。
私の母は「ミョウガを食べると物忘れする」といって食卓にのせませんでした。でも、ほんとうは好きだったみたいです。
父のほうは、薄切りにしたきゅうりとワカメの酢の物が好きでした。生姜の千切りをのせて、おいしそうに食べていました。
今は亡き両親のことをなつかしく思いながら、結局、親とは違うものを食べている、というのが可笑しくもあります。