スギライト(杉石)は、癒しと浄化の力がとても強いパワーストーンとして有名です。
ラリマー、チャロアイトと共に「世界三大ヒーリングストーン」というキャッチフレーズがついていますが、今のところはまだ、日本のみで通用している「世界三大」のようです。
私は、スギライトに『杖』のイメージを持っています。
旅路を支えてくれ、辛いときにはすがることができ、時には身を守る助けにもなる。
けれど杖は杖、歩くのも、考えて選択するのも、戦うのもアナタ自身ですよ、と諭しながら、それでいて優しく頼りになるスギライトなのです。
大好きな石のひとつです。
美しい紫色の石として知られていますが、うぐいす色、茜色、薄紅、グレー、黒、こげ茶など、色のバリエーションは豊富です。
英語表記は「Sugilite」なので、米国では「スジライト」とも発音されているそうですが、ここはぜひ、「ジ」ではなく「ギ」で、と願っています。
私がスギライトに特別な親しみを感じるのは、
日本の岩石学者・杉健一(すぎ けんいち 1901~1948)博士によって発見され、
村上允英(むらかみ のぶひで 1923~1994)博士によって命名された鉱物だからです。
スギライトの「スギ」は杉博士の「杉」、米国宝石学会 (GIA)で公式に発表された貴石・宝石のなかで、日本人の名前がついた唯一の石だといわれています。
スギライトが杉博士により、愛媛県の岩城島で発掘されたのは、1942年のことでした。(ちなみに「うぐいす色」)
2年後の1944年、日本鉱物学界に「未解決鉱物」として仮申請の後、岩石鉱物鉱床学誌に新種の鉱物として発表されました。
第二次世界大戦のさなかです。世界的・学術的に認められることはありませんでしたが、未来の日本岩石学へ貢献との想いが強かったようです。1943年に結核を発病し、ずっと病床についていた時期の、懸命な発表でした。
4年後、杉博士は47歳で亡くなります。
接した人のほとんどすべてが、彼のたいへん温和な人柄に感銘を受けており、その学風もまた、温和で調和的であったと評されています。
杉博士の研究を引き継いだのは、村上允英氏ら弟子たちでした。
1951年に開始された未解決鉱物の分析研究は、途中、当時の科学水準では分析が不可能と判断されて一時中断していた期間もありますが、高度経済成長に伴う科学の進歩による最新技術で、ついに分析に成功します。
国際新鉱物命名委員会にスギライトとして正式登録されたのは1974年 、正式認定は1975年でした。
発掘から命名まで、33年間ものタイムラグがある石なのです。
この間、1973年に南アフリカのウェッセルズ鉱山で発掘された紫色のスギライトが、「ウェッセルサイト」と誤報される事態も起こっていて、タイミング次第では、別の国で認定され、違う名前がついていた可能性もあったわけです。
村上博士は、分析研究中「岩城石」と呼んでいた石を、故杉博士に敬意を表し「スギライト(杉石)」と命名しました。
まさに、この石にふさわしい名前、この名前にふさわしい石だと思います。
杉健一博士(左)と 村上允英博士(右)