『鬼灯の冷徹』(ほおずきのれいてつ・2011年から2020年まで連載された江口夏実さんの漫画作品)の原画展に行ってきました。
日本の地獄を舞台にしたブラックコメディで、主人公の「鬼灯」は閻魔大王の第一補佐官を務める、有能で冷徹な鬼神です。
地獄を「運営サイド」の視点でとらえた日常的な物語として描き、鬼や妖怪、神獣、昔話の主人公、歴史上の人物などが登場します。おどろおどろしい地獄の要素を残しつつ、安心して笑える作品世界を構築しているところが素晴らしいです。
漫画原稿にカラー原画、色紙、巻物、屏風など、豊富な展示物が撮影OKということに驚きました。
Huluでテレビアニメを視聴して予習したのですが、地獄についての基礎知識も押さえておきたい思い、作者の江口夏実さんも尊敬している漫画家、水木しげるさんの『水木少年とのんのんばあの地獄めぐり』(マガジンハウス・2013年6月発行)で勉強しました。
『地獄めぐり』によれば──、
🔥死者の国の入り口には、三途の川というものがあって、そこで奪衣婆(だつえばばあ)に着ているものをはぎとられ、生きているときの罪の重さを計られる。
🔥罪が重いと、橋を渡って閻魔大王(えんまだいおう)の前に連れて行かれ、八つの地獄のなかから、その人が行く地獄を決められる。
🔥水木作品にも、鬼灯のような第一補佐官が描かれていました。
八大地獄
➊等活地獄(とうかつじごく):人間や動物、生き物を殺した者が来る地獄。杖や棒でつぶされる。
➋黒縄地獄(こくじょうじごく):盗みを働いた人が来る地獄。熱した鉄板の上に寝かされ、切り刻まれる。
➌衆合地獄(しゅうごうじごく):鉄の山に押しつぶされる。木の上にいるキレイな女の人に近づこうとすると、葉が刃物に変わって体が切り裂かれる。
➍叫喚地獄(きょうかんじごく):酒におぼれた人が堕ちる地獄。炎のような髪をした怖ろしい鬼がいる。
➎大叫喚地獄(だいきょうかんじごく):ウソをついた者が堕ちる地獄。舌をぬかれ、目玉をくり抜かれる。
➏焦熱地獄(しょうねつじごく):火の海。悪い考えを人に広めて、世の中を混乱させようとした者が来る。
➐大焦熱地獄(だいしょうねつじごく):火の海におぼれ、いくら泣き叫んでも休みなく焼かれる。
➑阿鼻叫喚地獄(あびきょうかんじごく):この地獄の苦しみは、他の地獄と比べようもない。他のすべての地獄の苦しみを合わせたとしても、その千倍は苦しい。
『鬼灯の冷徹』で私が好きな登場キャラクターは、「芥子(からし)」というウサギ♀です。大叫喚地獄の「如飛虫堕処(にょひちゅうだしょ)」で獄卒を務めています。
獄卒(ごくそつ)とは地獄で亡者を責め苛む鬼のことですが、芥子は鬼ではなく動物獄卒で、昔話「かちかち山」のウサギなのです。お爺さんをだまして「婆汁」を食べさせたタヌキに復讐を果たしたものの、いまだに深い恨みが残っています。そのため、普段は礼儀正しく温厚ですが、「狸」全般に過剰反応して豹変し、狂暴化することがあります。
怨念のエネルギーを仕事に向けて働き、鬼灯からも信頼が厚い芥子ですが、怨恨にとらわれ続ける自分に疑問を感じ、寺で修行をしてみたりと葛藤しています。
原作は完結していますが、アニメ化の方は途中なので、この先どうなっていくのか楽しみです。