かきがら掌編帖

数分で読み切れる和風ファンタジー*と、読書・心理・生活雑記のブログです。

イギリス~推理小説と児童文学の国~

今週のお題「行ってみたい場所」

 

ロンドン、ベイカー街221B

朝靄のなか、表には辻馬車が待っている。

「ワトソン、起きたまえ。ゲームが始まった!」

という、シャーロック・ホームズの声が聞こえる場所に行ってみたい。

 

アガサ・クリスティーの名探偵ミス・マープルが住んでいるのは、架空の村セント・メアリ・ミード

パディントン駅からローカル列車で2時間弱、そこからタクシーに乗って9マイルの場所にあり、ハイストリート沿いに教会と牧師館、郵便局、居酒屋兼旅籠、昔ながらの商店が並ぶ、ありふれたイギリスの村と書かれている。

色白で上品な老婦人、ミス・マープルが参加していた「火曜クラブ」では、話し手が謎の答えを知っている未解決事件を語り、他のメンバーは推理を競い合う。

そして「伝書鳩が巣へ帰るように」まっすぐ真相に行き着くのは、ミス・マープルのみなのだ。

 火曜クラブにハウスゲストとして参加し、翌朝は、ミス・マープルが丹精したイングリッシュガーデンを拝見しながら、英国風の朝食……

ファンにとっては、夢のツアーだと思う。

 

バーネット夫人「秘密の花園」の舞台はヨークシャー、荒涼としたムーアのはずれにある屋敷とその庭である。

この屋敷では、朝食でおかゆにハチミツをかけて食べる。それが、子供ごころには不思議だった。

おかゆにハチミツ?

当時「オートミール」と言われても、やっぱり「?」だったとは思うけれど。

部屋数が100以上という大きな屋敷と、広大な庭。さらにその庭のどこかに、塀で閉ざされた花園があるのだ。

見尽くそうと思ったら、しばらく滞在しないと。

 

ルーシー・M・ボストンの「グリーン・ノウ物語」シリーズ で、登場人物以外の主人公と言えるグリーン・ノウの館には、モデルとなった建物がある。

ケンブリッジ近郊のヘミングフォード・グレイに現存する、12世紀の初めに造られたマナーハウス(領主館)で、ボストン夫人は執筆している物語の舞台に住んでいた。

建物や庭園だけではなく、小さな置物にいたるまで、物語そのままだという。

はるか昔に館で暮らしていた子どもたちと時を超えて出会い、隠された宝物を探したり、魔女と闘ったりするグリーン・ノウの物語と、現実に存在するマナーハウスは、まさに、呼応しているようだ。

 

J.R.R.トールキンの「ホビットの冒険」と「指輪物語」は、ファンタジー中のファンタジーだけれども、ホビット庄だけは、イギリスのどこかにありそうな気がする。

地面に掘った穴の住居に住み、たっぷりの食事と平穏な暮らしをこよなく愛するホビットが、逆境や外圧に対しては、思いがけない勇気と知恵を発揮し、老練な魔法使いガンダルフすら瞠目するというところが好きだ。

もてなし好きな種族であるホビットだから、礼儀正しく訪問すれば、歓迎してくれるだろうか。

ものすごく運が良ければ、ガンダルフの打ち上げ花火を見物できるかもしれない。