かきがら掌編帖

数分で読み切れる和風ファンタジー*と、読書・心理・生活雑記のブログです。

伝聞怪談

 

時節柄、そこかしこで怪談のブログ記事を目にしました。つい、検索もしました。

怖がりの怪談好きなので、興味津々で拝読しては、夜中に思い出して戦慄しています。

 

私自身は霊感が強くありませんが、職場に霊感体質の人がいて、たまに怖い話で盛り上がっています。霊を見たり聞いたり感じたりしても、淡々とやり過ごし、しかるべく距離を置いて社会生活を送っている方たちは、少なからずいらっしゃるようです。

聞いたなかで、特に印象に残っている話があります。

ほどよい怖さの話ですが、とても短いので、内容はそのまま掌編風に、少しカサ増ししてみました。

 

    △ ▲ △ ▲ △ 

 

 20年以上前の話である。

 長いこと闘病していた親族が亡くなり、病室から地階の霊安室へ運ばれた。

 彼は安置された遺体のそばで、しばらく家族と葬儀の相談などをしていたが、尿意を催し、霊安室を出て同じフロアにあるトイレに行った。

 明るく静かなトイレ。

 他に使用している人はいない。

 用を足して、洗面台で手を洗い終え、ふと顔を上げると、一般的なトイレならば必ずあるはずの鏡が、取り外されていた。

(ああ、ここに鏡があると、映るはずのない何かが映ってしまうのだろう)

と思い、そのまま霊安室へ戻った。

 

    △ ▲ △ ▲ △ 

 

 実際に聞いたのは、

霊安室の隣のトイレってさ、洗面台の鏡が外されてるんだよね」(28文字)

「それは、つまり……」

「映っちゃいけないモノが映っちゃうからじゃない?(笑)」

 

しばらくは、夜遅くに、洗面所の鏡を見るのが怖かったです。

 

 

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