かきがら掌編帖

数分で読み切れる和風ファンタジー*と、読書・心理・生活雑記のブログです。

蛇口をさがしてみよう

 

春の嵐で降り続いた雨が、明け方になってあがりはじめた、金曜日の朝のことです。

ベランダに面した窓を開けると、排水用の溝いっぱいに雨水が溜まっていました。

コンパクトなベランダなので、隅にある排水口はエアコン室外機の陰になってほとんど見えません。

 

排水口がつまってしまうと、ベランダ全体が水浸しになり、下の階にも迷惑をかけそうです。 

気になりながら出勤し、職場で対処法をネット検索しました。

自分と同じ問題をかかえる人がいると知り、心強く感じます。さらにありがたいことですが、解決済みの人が様々な方法を公開してくれていました。

その日は帰りが遅くなったので、翌日の土曜日から掃除を始めました。

 

丸1日経ったのに、溝に溜まっている水はほとんど減っていません。

使い捨てのキッチングローブをはめて、ベランダを囲っているコンクリート柵と、室外機のすき間に腕を差し入れ、排水口のあたりを手探りしました。

なんとか届く範囲で手づかみしたゴミを取り除くと、溜まった水が流れ始めました。まずは、ひと安心。

葉っぱやビニール片、その他こまごました固形物を回収したあとは、100均ショップで買ってきた2種類の柄付きブラシを使い分けて掃除しました。ゴミをかき寄せるにはたわしタイプが、集まった泥状のゴミをからめとるにはスポンジタイプが役に立ちました。

溝に残った液状の泥は、翌日になって乾いてから、掃除用のウエットシートで拭き取りました。ようやくお掃除完了です。

 

今さら気づいたのですが、共同住宅の排水口は、それぞれのベランダごとにあるわけではないのですね…。

あらためて確認してみたところ、私が入居しているマンションは6ベランダに2つでした。つまり、うちの排水口には3世帯分の雨水が流れ込んでいるのです。

 責任を感じてちょっと憂鬱になりましたが、それでも、よそのベランダに排水口があるより気が楽です。

つまらせたまま掃除しない隣人にやきもきしたり、排水が逆流してきて文句を言いにいったりするほうが、よほどストレスになるので。

自分のところにあれば、自分で何とかできます。

なんとなく「統御感」という言葉を思い出しました。 

 

YUKIさんという方が管理されている「いつも空が見えるから」というブログがあります。

いつも空が見えるから | 子どもの疲労と発達・愛着

 

2015年8月に投稿された記事ですが、そのなかで「統御感」「内的統制」という言葉を知りました。 

「統御感」というのは、物事を自分でコントロールできるという感覚のことを意味しています。人生の舵は自分が握っているのだという強い意志です。 

統御感の対義語は、「無力感」です。 

 

「内的統制」とは「統御感」に似た概念で、内側から、つまり自分の行動によって、物事を変化させられるという感覚のことをいいます。反対に、外部の物事によって自分がコントロールされ、自分ではどうしようもないと考える人たちは「外的統制」と呼ばれています。 

 

「統御感」を抱く人や「内的統制」が高い人は、単に考え方が「ポジティブ思考」なのではないようです。

一般に、ポジティブ・シンキングとは、コップに半分入った水を見て、「もう半分しかない」と考えるのではなく「まだ半分もある」と考えることだといわれています。しかし、それは、現実の捉え方を変えて、自分をなだめているだけに過ぎません。

 あくまでハンドルは自分が握っていると感じている人たちは、コップの水を見て、次のように質問するのというのです。

「蛇口はどこですか?」

 

ここのところを読んで、私はとても感銘を受けました。

思いがけなく視界が開けたように感じました。

 私自身は「もう半分しかない」と考えるほうですが、がんばって「まだ半分もある」に変えようとするより、「蛇口をさがしにいく」ことを念頭に置きたいです。