かきがら掌編帖

数分で読み切れる和風ファンタジー*と、読書・心理・生活雑記のブログです。

腱鞘炎の注射

親指の付け根が痛くなるド・ケルバン腱鞘炎を発症したのは、今年の6月下旬でした。しかも両手同時にです。

すぐに整形外科で診てもらうべきだったのですが、先延ばしにしてしまいました。

その頃ちょうど、頸椎椎間板ヘルニアの治療が終わったばかりだったのです。3ヶ月以上ほぼ毎日、専用の機械で首を上に引っぱる牽引療法を続けるため、許可を取り勤務時間中に会社を抜けての通院でした。

またすぐに別件で通院というのも気が進まず、そのうち自然に治るかもしれないと、とりあえず様子を見ることにしました。

 

親指が痛いと、ごくあたりまえの日常的な動作がつらくなります。

「つまむ」や「ひねる」などピンポイントで力を入れるときが特に痛みました。洗濯ピンチで洗濯物をはさむ、服のボタンをとめる、ペットボトルのキャップを開ける、タオルをしぼる……、数えあげればキリがありません。

それでも、2か月ほど経つころには、痛みにも慣れて、ごまかしながら過ごせるようになりました。

 

職場で、腱鞘炎の治療経験者(50代男性)に話を聞くと、

「注射をすれば、てきめんに痛みはとれる。けれど、その注射はかなり痛い」とのこと。

どのぐらい痛いかというと、椅子に腰掛けてではなく、診察台に横たわって注射するほど、だといいます。つまり、痛みのあまり椅子からころげ落ちると危険だから……。聞いただけで怖じ気づきました。

どうせ2ヶ月も我慢してきたのだから、もう少しがんばってみようと、そのままの状態を続けました。やがて、左の親指に「ばね指」の症状が頻発し、右のほうは第1関節で軽く曲がったまま固まってしまいました。

反省しています。

かなりの痛みを伴う疾患を治療も受けさせずに放置し、関節拘縮まで生じさせてしまう――、第三者にそんな仕打ちをしたら虐待ですね。

 

ここに至って、ようやく受診を決めました。

それでも思い切り悪く、そんなに痛い注射なら予備麻酔のような処置をしてくれるところはないものかとネット検索し、ひとつだけ見つかったものの、遠方で通院できそうもありません。

ですが、探している過程で、電車を使って30分以内で行ける場所に、手外科専門医の先生が開いているクリニックを発見したのです。土曜日も午前中なら診療受付しているので、仕事を休むことなく通えそうです。

数ヶ月のあいだ、ずいぶん腱鞘炎について検索してきたけれど、結局は「病院に行かなくても大丈夫という気休め」が欲しかっただけで、ほんとうに必要な情報を探そうとしてこなかったのだと気づきました。

「探さなければ見つからない」 

ということを、近ごろ心がけていたはずなのに。

 

さっそく土曜日に行きました。

問診が済むと、その場で超音波検査。腱鞘炎とは「手首の親指側で、腱のトンネルになっている部分が狭くなるために、手首や親指を動かすと痛みを生じる病気」だそうですが、なるほどトンネル部分が腫れて厚くなっているのが、他の指のと比べると一目瞭然です。

そしていよいよ、

「副腎皮質ステロイドホルモンと局所麻酔薬の混合液の注射」を提案されました。

 

「先生、すごく痛いという話を聞いたんですが」

「そうですね。ちょっと痛いです」

「ちょっと???」

「どうしますか。せっかく来たんだから、注射していきませんか?」

というような会話があり、注射することになりました(椅子に座ったままで)

心配していた痛みのほうは、インフルエンザの予防接種くらいの痛さでした。

 

次の診察は、2週間後。

腱鞘炎の痛みは日ごとに軽減していきました。ばね指の症状のほうは続いていましたが、再診の前日くらいからほとんど出なくなりました。

先生に報告すると、ひとまず治療は終了ということに。

このまま治まることもあれば、再発する場合もある、というお話でした。念のためロキソニンを処方してくださいました。

 

ネットで見た情報ですが、ステロイド注射はよく効くけれど副作用も大きいので、あまり繰り返せないそうです。

けれど、もし手術ということになったとしても、この先生にお任せすれば大丈夫と信頼しています。私の腱鞘炎にとって最良のドクターに出会えたと思っています。