かきがら掌編帖

10年あまり通っていた童話教室で「宿題」として書いたものに加筆修正して載せています。

第4の可能性が……

ほんとうにどうでもいい話なのですが、この15日間、気がかりになっていることがあるので、書きとめておきたくなりました。

 

クモの話です。

 

 

先々週の月曜日の朝、出勤前に洗濯をしてベランダに干し、網戸と窓とカーテンを閉めました。ふと見ると(気配を感じたのでしょうね)カーテンの上のほうに、1cmほどの黒いクモが!

私は虫が苦手です。

一瞬フリーズした後、見なかったことにしようとして視線をそらし、けれど思い直して、おそるおそる近づいた時には、もう消えていました。ちょっとカーテンをゆすってみましたが、姿を現しませんでした。

 

ざわざわした気持ちのまま出勤し、仕事の合間にネットで検索してみると、どうやら「アダンソンハエトリ」という、よく家の中で見かける種類のハエトリグモらしいとわかりました。

名前の通り、ハエなどの小さな虫を捕まえて食べる「益虫」で、巣を作って待ち伏せるのではなく、家中をパトロールして狩りをする。動きはすばやく、ピョンピョン跳ねることもある。巣は作らなくても常に糸を放出して、落下防止の命綱にしている。昼行性で寿命は約1年。大きさは雌雄とも1cm未満。噛まない、毒はない。

 

集めた情報を検討した結果、さしあたり同居してもいいかなと思いました。どうしてもがまんできなかったら、その時はその時として。

帰宅後には現われなかったアダンソンですが、翌朝、キッチンで食器を洗っているときに、姿を見せました。「いつの間に?」というくらい、いきなりの出現で、目の前の壁を移動しています。

トリハダをたてながらもがんばって観察すると、やはりアダンソンで、雄のようでした。途中、足をすべらせて落ちそうになった時も、命綱の糸で元の位置に戻り、着実なスピードで壁を横ぎっていきます。

「よろしくね、アダンソンさん」

と、挨拶して見送りました。

 

さて、それからというもの、しじゅう壁やカーテンに目をくばっているのですが、さっぱり見かけません。おかしいな、どうしたのかな?と思いながら、数日を過ごしました。

 

同じ週の土曜日、とあるワークショップに参加しました。20畳くらいの会場で、約20名の参加者がいました。

すると、部屋中央の床の上で動く、小さな黒い虫が――。

何人かが「クモだね」と気づくなか、ファシリテーター(ワークショップを仕切っている人)が、

「ハエを捕るクモだから捕まえないで」

と、言いました。

アダンソンハエトリです。偶然の一致におどろいた私は、居合わせた人たちにアダンソンのことをくわしく語りたかったのですが、クモが嫌い人には苦痛だろうと思い自粛しました。ブログなら、先を読まないという選択肢がありますが、対面だとそうもいかないですからね。

会場のアダンソンは、その日いっぱい、のびのびと歩きまわっていました。

 

一方、わが家のアダンソンのほうは、姿を見せないまま今にいたっております。さいごに見かけてから、今日で2週間になりました。

そうなると、考えられる理由は、

① 外に逃げた(マンションの部屋は気密性が高く、網戸もあるけれど)

② たまたま遭遇しないだけ(日がたつにつれて、その可能性は低くなってきている)

③ 見えないところで永眠している(いちばん考えたくない事態)

あたりでしょうか。

 

ところが昨夜、4つ目を思いつきました。

④ 私の荷物にまぎれてワークショップについていった!

 

つまり、家にいたのと会場にいたのは、同じアダンソン。

これがいちばん望ましいと思っています。