かきがら掌編帖

数分で読み切れる和風ファンタジー*と、読書・心理・生活雑記のブログです。

オリヴァー・サックス著『火星の人類学者』の勇気

『火星の人類学者』(早川書房)は、脳神経科医であり作家でもあったオリヴァー・サックスの「医学エッセイ」です。 火星の人類学者―脳神経科医と7人の奇妙な患者 (ハヤカワ文庫NF) 作者: オリヴァーサックス,Oliver Sacks,吉田利子 出版社/メーカー: 早川書…

ダーウィンとミミズ

ダーウィン(1809年~1882年)は22歳のとき、イギリス海軍の測量船ビーグル号に乗船し、世界一周をしました。5年にわたる航海中に行った自然観察と調査、標本の採集から、生物は進化するという説「進化論」が生まれたのです。 帰国後は原因不明の体調不良に…

ゲシュタルト療法~変化の逆説~

ゲシュタルト療法のワークで時折、「変化の逆説」という言葉を耳にしました。 簡単に述べると、「人は、自分でない者になろうとする時ではなく、ありのままの自分になる時に変容が起こる」ということである。つまり、変容は自分あるいは他者がその人を変えよ…

『骨盤にきく』~「身がまま」に生きる知恵~

新刊コーナーに並べられていた本の、表紙の絵と文字に引かれて手に取ったことをよく覚えています。 骨盤にきく―気持ちよく眠り、集中力を高める整体入門 (文春文庫) 作者: 片山洋次郎 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2009/04/10 メディア: 文庫 購入: 10…

『植物はそこまで知っている』~ウチノキについて~

20年前のこと。当時働いていたオフィスで、園芸好きの社員が空き瓶を利用した水栽培を始めました。 社内に置いてある観葉植物の、伸びた茎や小枝をカットして、水につけておくと根が生えてきます。 「いずれ持ち帰って、鉢に植え替える」と言っていたので…

「いろは歌」いろいろ

アルファベット26文字をすべて使って、意味のある短文にしたものをパングラム(pangram)と呼ぶそうですが、「いろは歌」は、美しい語句と深い意味とを兼ね備えた、ひらがな版パングラムの最高峰といえます。 色はにほへど 散りぬるを 我が世たれぞ 常ならむ…

田房永子さん『呪詛抜きダイエット』のゲシュタルト療法

ゲシュタルト療法のプレトレーニング期間中は、ずっと単発のワークショップに参加していたので、「ゲシュタルトのワークショップは初めて」という方と、ご一緒する機会が何度かありました。 そのなかのひとりから、田房永子さんのコミックエッセイを読んで、…

星新一さんの世界『きまぐれ星のメモ』

「ショートショートの神様」星新一さんのことを教えてくれたのは、高校時代の同級生でした。 文庫本を何冊も買って読み耽りましたが、長い長い年月を経た今、手元に残っているのはエッセイ集1冊です。 きまぐれ星のメモ (角川文庫) 作者: 星新一 出版社/メ…

HSP~炭鉱のカナリヤ以外の道~

「HSP」とは、Highly Sensitive Person(人一倍敏感な人)の略で、エレイン・N・アーロン博士が提唱した概念です。 1991年に高敏感性(高感受性)に関する研究を始め、現在も続けているアーロン博士は、ご自身がHSPであり、また、Highly Sensitive Child(HS…

ユングの臨死体験

以前から臨死体験の話には興味を持っていましたが、両親が他界したことで、関心が深まったように思います。 「死の受容のプロセス(否認~怒り~取引~抑うつ~受容)」で有名なエリザベス・キュブラー・ロス博士の本を読むうち、さらに広範囲に知りたくなり…

漂流の「作法」

ニッポン人異国漂流記 作者: 小林茂文 出版社/メーカー: 小学館 発売日: 1999/12 メディア: ハードカバー 購入: 1人 クリック: 1回 この商品を含むブログを見る 以前、作家の吉村昭さんのエッセイで、 『鎖国』していた日本には海洋文学がないと言われるが、…

『遠野物語』口語訳は原典への橋渡し

柳田國男さんの文章が好きなので、口語訳には関心が薄かったのですが、ラジオ番組で紹介されているのを聞き、読んでみたくなりました。 口語訳 遠野物語 (河出文庫) 作者: 柳田国男,小田富英,佐藤誠輔 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2014/07/08 メ…

今こそ『時の娘』

スコットランド出身の推理作家ジョセフィン・テイの歴史ミステリ『時の娘』(1951年発表)は、時を超えて永く読まれ続ける名作中の名作です。 英国史の予備知識がなくても、物語として、知的エンタテインメントとして、心から楽しめる1冊。 時の娘 (ハヤカ…

ゲシュタルト『ルビンの杯』と其角

ゲシュタルト心理学の重要な概念のひとつに、『図』と『地』という考え方があります。 《figure and ground》 ある物が他の物を背景として全体の中から浮き上がって明瞭に知覚されるとき、前者を図といい、背景に退く物を地という。 小学館『デジタル大辞泉…

俳句はことばの娯楽『寝る前に読む 一句、二句。』

遠くない将来、定年退職して働かなくてもよくなったら、俳句を趣味としたいです。 あまり縁のなかった世界なので、少しずつ情報を集め始めました。 インターネット俳句会(ネット句会)というのもあり、扉はいろいろなところに存在しているようです。 そのう…

ユニコーンの角 ~「普通がいい」という病~

「普通」とは、使い勝手の良い言葉だと思います。 平常であることの安心感や、主流派の心強さを表せます。どこか謙虚だけれど、卑下しているというほどではなく、時代や環境によって変わる幅広さも持っています。 その反面、否定的に使われると、急に表情が…

ゲシュタルト療法「Why」より「How」

ゲシュタルト療法という心理療法を習っていました。 一緒にトレーニングコースを受講していたメンバーは、セラピストやカウンセラー、医療関連の仕事をしている人などが多かったです。 私の場合は個人的興味だけだったので、専門的なアドバンスコースに進む…

アーシュラ・K・ル・グィンさんを偲んで

最初に出会ったル・グィンさんの物語は『ゲド戦記』3部作で、その後「米SF界の女王」であることを知り、一連のSF作品を読んだ。 『ゲド戦記』と同じくらい心に残っているのが、『風の十二方位』という短編集だ。 風の十二方位 (ハヤカワ文庫 SF 399) 作…

河合隼雄著『「出会い」の不思議』が開く扉

先月、河合隼雄さんについて記事を書いたとき、この『「出会い」の不思議』をまだ読んでいないことに気づき、タイトルにも引かれ、図書館から借りてきました。 「出会い」の不思議 作者: 河合隼雄 出版社/メーカー: 創元社 発売日: 2002/05 メディア: 単行本…

エンプティチェアとインナーチャイルド(?)

ゲシュタルト療法のワークショップでは、参加者のワーク内容、ワークショップ内で知り得る個人情報について、一切外部に漏らさないこと、本人の同意なしには、いかなる公表もしないことを約束します。 自分のワークについてなら公表できるので、備忘も兼ねて…

機会

数十年来の河合隼雄ファンですが、ついにご尊顔を拝することは叶いませんでした。 機会はあったのです。 文化庁長官在任時に講演のお知らせを目にして、場所も近く、テーマも児童文学ということで、ぜひ行きたいと思いました。 募集要項には「申し込みはファ…

河合隼雄著「明恵 夢を生きる」を読むたびに思うこと

数十年来の河合隼雄ファンです。 その河合隼雄さんが「とうとう日本人の師を見出したという強い確信をもった」とまで敬意を表されたのが、鎌倉時代初期の名僧、明恵(みょうえ)上人です。 明恵上人が約40年にわたり夢を記録した『夢記(ゆめのき)』を、…

児童文学のなかのイマジナリーフレンド

イマジナリーフレンドという言葉を、読者登録させていただいている Emily-Ryu さんのブログ記事で、初めて知りました(ありがとうございます!) Wikipediaにも載ってました。 イマジナリーフレンド(英: Imaginary friend)とは、「空想の友人」のことであ…

生きている物語たち「ナショナル・ストーリー・プロジェクト」

今週のお題「読書の秋」 「ナショナル・ストーリー・プロジェクト」 ポール・オースター 編 ラジオ番組に全米のリスナーから寄せられた実話集であり、作家ポール・オースターが編んだアンソロジーでもあります。 「編者まえがき」に書かれている、この本の成…

「麴のちから!」~今は塩麹が私の必須食材です~

数年前ブームになっていましたが、私が塩麹を使い始めたのはここ半年くらいです。原材料が米麹と塩だけのものは、なかなかお店に置かれていないので、ネットで購入したりしています。 「麴のちから!」 山元 正博 著 100年、3代続いた麴屋に生まれ、頭の…

「一汁一菜でよいという提案」~図書館へ返す前に抜き書きしたくなる本~

図書館にリクエストしたら、すでに予約している人がたくさんいて、順番がまわってくるまで5ヶ月以上かかりました。 「一汁一菜でよいという提案」 土井 善晴 著 一汁一菜とは、ただの「和食献立のすすめ」ではありません。一汁一菜という「システム」であり…